2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of ultra-high efficiency microwave wireless power transmission technology for undetectable power receivers in metal housing
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20K14730
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
村田 健太郎 岩手大学, 理工学部, 助教 (20848030)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無線電力伝送 / マイクロ波 / 空洞共振 / 寄生アンテナ / 電磁遮蔽 / 負荷変調 / Sパラメータ / 勾配法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、車両や産業機器を想定した金属筐体内のデバイスに対し、マイクロ波を用いてハーネスレスで給電可能とする技術の確立を目指す。先行研究では、筐体内に設置した寄生アンテナの負荷制御により電磁界分布を電子的に撹拌する手法が報告されているが、デバイスが電池切れでフィードバック不能な場合、最適な電磁界分布を生成する負荷条件の特定が困難であった。 そこで提案法では、下記2つの原理に基づきフィードバック不要で給電効率の最大化を図る。第一に、電磁遮蔽空間で成立する「送電アンテナへの反射電力最小化=受電アンテナへの給電効率最大化」の特質を利用する。第二に、寄生アンテナの負荷制御時に送電アンテナで観測される反射量の変動から、反射量を特徴づける寄生アンテナのSパラメータを推定する。以上より、推定Sパラメータから反射量を最小とする寄生アンテナの負荷条件を特定でき、間接的に給電効率を向上可能とする。 本年度はまず、寄生アンテナ1素子を用いた場合に関し、Sパラメータ推定式と推定Sパラメータに基づく予測反射曲線の最小解を閉形式で導出した。導出結果に基づく提案法の適用により、20cm立方の銅製筐体を用いた給電実験において、全観測点で給電効率の向上効果を確認した。一方、寄生アンテナ1素子の場合、筐体内定在波の影響により給電効率の改善が軽微となる不感点が発生することが課題となっていた。そこで空間的自由度の利用による給電特性の改善を見込み、提案法を寄生アンテナ2素子に拡張可能とするアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムの適用により、1素子の場合と比較し、給電効率が最大で約60倍改善し、観測点全点で50%以上の給電効率が得られ不感点の除去に成功した。以上の研究内容に関し、国際学会ISAPを含む計3件の学会発表と、国際学術論文誌AWPLへの投稿を達成し、既に再投稿推奨の回答が得られR3年度中の採録が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本事業開始当初の研究計画では、前述の研究実績に加え(A)複数寄生アンテナを用いた場合のSパラメータ推定式の導出と(B)予測反射曲面最小化アルゴリズムの開発を初年度の達成目標としていた。 (A)については、少素子の場合のSパラメータ推定式が、多素子の場合の推定式の導出過程で再帰的に利用されるという知見に基づき、任意の素子数の推定式を帰納的に導出するアプローチを考案した。そしてMATLABの記号的数式処理ツールSymbolic Math Toolboxを活用し、Sパラメータ推定式導出アルゴリズムを開発し、手計算による導出が困難な4素子以上の場合の推定式の導出に成功した。 (B)については、(A)の推定式に基づき予測される反射曲面上に複数の初期点をランダムに仮定し、勾配法に基づき並列的に反射最小点を探索するアルゴリズムを開発・実装した。なお本アルゴリズムの有効性に関し、ほとんどのケースにおいて大域的最適解が得られることを数値解析的に確認済みである。 上記の研究内容については国際学術論文誌MWCLへの投稿を予定しており、原稿の執筆は9割方済んでいるため、R3年度早期の投稿が見込める。 また上記理論を実証するための実験系の構築については、当初R3年度の検討内容としていたが、現時点でアンテナおよび撹拌機付き金属筐体の製作が完了しており、寄生アンテナの自動負荷制御機構についても設計が完了し、メーカに試作を依頼中である。加えて、反射電力および給電効率を測定するためのベクトルネットワークアナライザの自動測定プログラムは、前述の少素子寄生アンテナを用いた実験で使用したものを流用可能である。 以上のことから、当初の研究目標は既に達成済みであり、R3年度の実験に向けた実験系の構築も概ね完了しているため、試作中の自動負荷制御機構が納品され次第、速やかに多素子寄生アンテナを用いた実験に取り掛かることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度の取り組みとして、まず前述の撹拌機付き金属筐体を使用し、多素子寄生アンテナを用いた実験を実施する。本実験系では、撹拌機により金属筐体内の環境をランダムに変化させることができ、従来の筐体よりも多数の観測点を設けていることから、提案法が筐体構造および受電位置に依らず有効であることを統計的に評価することが可能となる。現在、4系統分の自動負荷制御機構を試作予定であり、寄生アンテナ数の増加に伴う給電性能の向上効果を評価することができる。このように空間的自由度を最大限に活用することで、計画当初の目標である「筐体内位置に依存せず90%超の給電効率を達成可能であること」の実証を目指す。 ところで、従来の筐体を用いたこれまでの検討結果から(A)筐体間隙からの電波漏洩および(B)筐体内損失性媒体による電波消失により、提案法が機能しないケースが発生することを確認している。 (A)について、前述の撹拌機付き筐体は、アンテナ挿入用の貫通孔を適切にシールドできるよう設計されており、電波漏洩を極限まで抑制することができる。一方で、筐体に換気・排熱孔を必要とするアプリケーションを想定し、電磁界解析に基づき筐体からの電波漏洩を抑制できる貫通孔の形状やサイズ、寄生アンテナの最適配置について並行して検討する。 (B)については、送電アンテナにおける反射の低下が、受電アンテナと損失性媒体のどちらの損失に起因するものかを区別することができれば対処可能である。例えば、提案法の「反射最小化=給電効率最大化」の原理は空洞共振現象によるものである。したがって周波数軸の活用により、共振の鋭さを調べることで原因の切り分けができるものと考えられる。共振の鋭さに基づく原因の切り分けには、機械学習による分類アルゴリズムの利用を検討する。 以上の追加検討により、実利用シーンへの提案法の適用可能性を評価する。
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Research Products
(3 results)