2021 Fiscal Year Research-status Report
Unifying Position Verification and Position Estimation: Case of Received Signal Strength
Project/Area Number |
20K14743
|
Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
長縄 潤一 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 主任研究員 (40760400)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 位置検証 / 位置推定 / 受信信号強度 / ADS-B |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は位置推定と位置検証を統一する理論の構築と活用を目指している.測定量としては受信信号強度を用いる.昨年度までに,位置推定と位置検証を共通の前提条件で定式化し,性能を相互に変換することで全体として理論を統一した.これをもとに令和3年度は次の項目を実施した. (1) 航空分野における位置共有システムであるADS-Bに対して,理論を応用するための実験を行った.実験では,在空機の信号を受信し,その受信信号強度から航空機までの距離を逆算した.逆算にあたって,正確な送信電力が未知であることへの対処,ならびに大気減衰と自由空間損失を同時に考慮するテイラー級数法を提案した.計96時間のデータを収集し,266フライトを分析した.また,過去の実験データも併せて解析した.その結果,測距誤差を正規分布で近似できることを確認した.これは昨年度に導出した理論の前提条件となっており,その検証となった.一方で,測距誤差は標準偏差で17.2 km ~ 18.6 km となった.ADS-Bの最大覆域を考えると位置検証には利用できるものの,位置推定には有効性が低く,今後の課題は測距精度となった. (2) 理論を数値計算するパラメータスタディを実施した.パラメータの設定には(1)で実施した実験結果を参考にし,性能指標としては不正な位置情報の検知率を評価した.理論を活用すると,位置推定結果を位置検証に応用する「間接法」および位置推定を経ない「直接法」を定式化できるため,それらの性能比較を行った.その結果,間接法の方が高い検知率を示し,統一した理論を応用することで性能向上を実現できた. なお,当初,実験結果を踏まえた理論の修正を計画していたが,(1)の通り前提条件を検証できたため,実施不要と判断した.また,(2)では位置精度の評価も計画していたが,測距精度を踏まえると有効性が限られると判断し,実施を見送った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験を通じて理論の前提条件を検証でき,現状では修正不要であることを確認できた.また理論を活用することで,位置検証の性能向上が実現可能であることを示した.これらは当初の計画で目指した成果である.一方,当初想定されていなかった課題としては,受信信号強度に基づく測距精度が粗く,位置推定の面では有効性が限定的である点が挙げられる.しかしながら,既に位置検証の面では有効な結果が得られているほか,理論の修正が不要であったため,今後は測距精度の改善に注力することができる.したがって,総合的に判断して,おおむね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度明らかとなった課題である受信信号強度による測距精度の改善に取り組む.具体的な手法としては,まず,アンテナダイバーシティの活用を考える.ADS-B信号は上下のアンテナから交互に送信されており,これまでの検討では遮蔽されにくい機体下方のアンテナのみを使用していた.しかしながら,上方のアンテナの信号も活用すれば,ダイバーシティの効果によってフェージング等の影響を抑え,測距精度の改善が見込まれる.また,併せて複数信号を利用した平滑化の導入も考える.最も単純な移動平均から検討を始め,効果を見極めながら追尾フィルタ等の発展的な手法の導入を目指す.これにより,観測雑音の影響を低減し,測距精度の改善が見込まれる.さらに,これらの改善結果を踏まえつつ,必要に応じて理論の修正やパラメータスタディの再実行を行う.
|
Causes of Carryover |
参加した国際会議2件がオンライン開催であったため,海外旅費が不要であった.オンラインの場合,学会登録料が低く抑えられたものもあった.そこで,追加の情報収集のための公開講座参加,ならびに測定環境の充実に向けた実験装置関連や電波伝搬シミュレータに追加支出したが,結果的に残額が生じた.残額については,成果発表をより充実させるために使用し,登録料ならびに学会が徐々に現地開催されつつあることに対応した旅費への支出を計画している.
|