2020 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of tongue movement mechanism during infant sucking and development of a breast pump with a tongue model
Project/Area Number |
20K14756
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
西 恵理 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80757435)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 計測 / 舌運動 / 吸啜 / 乳児 / 哺乳 / 運動メカニズム / 搾乳器 |
Outline of Annual Research Achievements |
女性の社会進出と母乳育児推進の観点から,安心安全な搾乳器が求められている。市販されている搾乳器は,その搾乳機構が乳児の「吸い方(吸啜)」にみられる舌の自然な動きと異なるため,搾乳時に母体に苦痛を与えるなどの問題を有している。本研究では,感圧センサを配した手袋型センサデバイスを用いて乳児の吸啜時の舌の力を計測し,その結果と従来研究の人工乳首内蔵型片持ち梁センサを用いて解明された知見とを融合し,乳児の吸啜メカニズムの詳細を解明する。さらに,母乳摂取動作に関与する最適な舌運動モデルを構築し,母体に優しい新たな搾乳器実現への基本仕様を確立することを目的とする。 2020年度において,(1)センサの個数を増やした手袋型センサデバイスを用いた舌運動データの収集,(2)従来研究で得た片持ち梁型センサデバイスを用いた計測データと今回収集する手袋型センサデバイスを用いた計測データとの比較・補正,を目的とした。 (1)に関しては,COVID19の影響で,被験者の確保が困難となり3名のみの計測となった。そこで,(2)に注力し,これまでに計測した結果データを用いて乳児の吸啜時における蠕動様運動の力学的特徴を分析し,(母親の乳首から)直接母乳の摂取が可能な乳児およびそれ以外の乳児(哺乳瓶を用いた栄養摂取やチューブを用いて経管栄養摂取している乳児)の共通点および相違点を明らかにした。 さらに,乳児の吸啜時における口腔内モデルの構築に成功した。このモデルは乳児の舌運動を再現することが可能であるため,被験児確保が困難な状況であっても,搾乳器に必要な力学的パラメータの計測が可能となる。この口腔内モデルは,将来的に舌の動きを再現した搾乳機における主要な構成要素となり得るものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度における課題(1)センサの個数を増やした手袋型センサデバイスを用いた舌運動データの収集については,COVID19の影響で被験児の確保が困難となり,予定より少ない結果となった。そのため課題(2)に注力し,2群(A群:母親の乳首から直接母乳の摂取が可能な乳児,B群:哺乳瓶を用いた栄養摂取やチューブを用いて経管栄養摂取している乳児)において,新たな共通点および相違点を明らかにすることができた。その成果を令和2年電気関係学会関西連合大会にて学会発表した。 また,片持ち梁型力センサをこれまでの6個から9個配置へ人工乳首に内蔵することに成功し,数名の被験児に対して計測した結果を42th Annual International Conference of the IEEE EMBSにて発表した。 さらに,衛生的に計測する環境を整えるために新たな材料を用いたセンサデバイスを考案し,特許出願を行った。そして被験児確保困難な状況を打破するために乳児の吸啜時動作を再現した口腔内モデルの構築を行い,特許出願を行った。今回構築した口腔内モデルは,被験児の代替として活用するだけでなく,舌の動きを再現した搾乳器の実現に向けて主要な構成要素になると考えている。 また,異なる人工乳首に対する舌の力計測を行い,人工乳首の形状と舌の力の関係を明らかにした。この結果は,電気学会共通英文論文誌に掲載決定している。このように,順調に研究成果を挙げ,国際的な場においても発表できており,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は,(A)計測データの収集(B)計測データの比較に基づくデータ補正(C)乳児の舌の動きを再現した搾乳器の構築が必要となる。(A)に関してはCOVID19の状況を鑑みて再開させ,当初想定の被験児数確保を目指していく。(B)および(C)に関しては,これまでの計測データと構築した口腔内モデルから出力されるデータを用いることで推進可能であるため,(A)を待たずして行う予定である。さらに,研究協力先である2社の企業と,新しいセンサの開発および口腔内モデルの完成を進めていく予定である。再現性および信頼性の高い口腔内モデルの実現に向けては,最終的に乳児の実口腔で計測したデータを根拠とした裏付けが必要だと考えている。 また,将来的に口腔内モデルを搾乳機へ実装するためには小型化が必須であり,今後検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響により,被験者を募った計測が困難となったため,謝金は使用できなかった。COVID19の影響により,海外での国際会議がオンライン開催となったため,旅費及び宿泊費等が不要となった。
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Research Products
(4 results)