2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study for (111)-oriented magnetic tunnel junctions
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20K14782
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
増田 啓介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 研究員 (40732178)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁性 / 表面・界面物性 / トンネル磁気抵抗効果 / 垂直磁気異方性 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来ほとんど検討されてこなかった(111)配向型の磁気トンネル接合(MTJ)について理論的検討を行った。 1. まずこのようなMTJの中で最もシンプルなfcc-Co/MgO/fcc-Co(111)、fcc-Ni/MgO/fcc-Ni(111)の検討から始めた。第一原理計算とLandauer公式に基づく伝導計算の結果、fcc-Coを用いたMTJにおいて2000%を超える高いトンネル磁気抵抗比(TMR比)が得られることを明らかにした。また電子状態を詳細に解析した結果、このような高TMR比はCo-3dとO-2pによる界面反結合状態が左右界面間で共鳴トンネルを起こすことで引き起こされることがわかった(界面共鳴トンネル機構)。本成果は論文誌(K. Masuda, H. Itoh, and Y. Miura, PRB 101, 144404 (2020))に掲載された。 2. 続いてMTJ中の強磁性電極材料をfcc単元素金属から同じくfcc構造を持つL11合金に変えTMR比の解析を行った。L11合金は[111]方向に強い結晶磁気異方性を持つため、これらの合金を含む(111)配向MTJでは大きな垂直磁気異方性の達成も期待できる。計算の結果、Coを含むL11合金(CoNi、CoPt、CoPd)を用いたMTJにおいて、大きな垂直磁気異方性と2000%を超える高いTMR比が両立しうることがわかった。このMTJの場合にも高TMR比は界面共鳴トンネル機構によって生じていることが明らかになった。また大きな垂直磁気異方性の起源についてもスピン軌道相互作用に関する2次摂動解析を用いて議論を行った。本成果は論文誌(K. Masuda et al., PRB 103, 064427 (2021))に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(111)配向MTJにおけるTMRの基本的性質とその物理理解を明確にすることができたため。また強磁性合金を用いた(111)配向MTJに関して、大きな垂直磁気異方性と高TMR比が両立しうる系を理論提案できた点も当初の計画以上の成果である。これらの成果について既に論文出版済みである点も上記区分とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 初年度の研究で(111)配向MTJが持つ潜在能力を明らかにすることができたので、2年目はMTJ中に用いる物質の幅を広げ、(111)配向MTJの更なる可能性を明らかにしたい。例えば絶縁バリア層として酸化マグネシウム以外の絶縁体を用いたときにTMR特性がどのように変化するか等を検討したい。 2. TMR比の絶縁バリア層数依存性について詳細に検討したい。従来型(001)配向MTJではTMRがバルクのバンド構造由来であり、TMR比は絶縁バリア層数とともに単調増加することが知られている。一方(111)配向MTJのTMRは界面電子状態由来であるため、絶縁バリア層数依存性も従来の(001)配向MTJとは定性的に異なるものになると期待される。 3. 界面電子状態とTMRの関係性についての理解を深化させたい。この目的にはシンプルな(111)配向MTJをタイトバインディング模型でモデル化し、第一原理計算ベースではできない解析を行うことを考えている。
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Research Products
(3 results)