2020 Fiscal Year Research-status Report
窒化物半導体スラブ型フォトニック結晶の品質改善と光集積回路への応用
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20K14788
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
田尻 武義 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (00842949)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スラブ型フォトニック結晶 / 窒化物半導体 / 光源 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、窒化ガリウム(GaN)から成る二次元フォトニック結晶薄膜(スラブ)の高品質化を目的に、その作製技術の改善に取り組んだ。これまでに、申請者は、電子線リソグラフィと反応性イオンエッチングによる二次元フォトニック結晶パターンの形成技術と、GaNスラブを中空化するためのスラブ下層(犠牲層)の選択的溶液エッチング(電気光化学エッチング)技術を組み合わせた中空状GaN二次元フォトニック結晶スラブの作製法を開発してきた。当該年度は、走査型電子顕微鏡観察による構造評価に基づいて、上記作製法における電気光化学エッチングの進行について考察することで、良質な中空GaNスラブ構造が得られるエッチング条件を明らかにした。特に、二次元フォトニック結晶パターンを形成するための反応性イオンエッチングが、犠牲層の電気光化学エッチングの均一性に強い影響を及ぼしていることを発見した。反応性イオンエッチングに多段階プロセスを導入することで、犠牲層を均一、かつ、選択的に除去できることを示した。多段階プロセスをイオンエッチングに取り入れた作製法を用いて、InGaN量子井戸を埋め込んだ中空状GaNマイクロディスク共振器を作製し、その量子井戸からの発光スペクトルを測定したところ、共振器モードに起因した鋭いピークが発光スペクトルに観察されることがわかった。また、より厚い犠牲層についても、多段階イオンエッチングを用いることで、電気光化学エッチングにより均一な選択エッチングが可能であることも分かった。以上の結果は、多段階イオンエッチングを用いた光ナノ構造のパターン形成が、電気光化学エッチングによる犠牲層の均一除去において重要であることを示しており、中空状GaNフォトニック結晶スラブ構造の品質改善への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、窒化ガリウム(GaN)から成る二次元フォトニック結晶薄膜(スラブ)の高品質化を目的に、前年度の作製技術の改良を進めることで、比較的良質なGaN中空スラブ構造の作製が可能であることを実験的に示すことに成功した。特に、多段階イオンエッチングなどの微細加工における新たな要素技術を取り入れることで、スラブ下のInGaN系超格子層(犠牲層)がより深くエッチングされたGaN中空スラブ構造の作製が可能であることを始めて示すことができた。また、InGaN量子井戸が埋め込まれた直径3 μmの中空状GaNマイクロディスク構造を作製し、その顕微発光スペクトルを測定したところ、マイクロディスクにおける共振器モードスペクトルを青色波長域において観測することができた。これらの成果は、本研究で開発した作製法により、高品質な窒化物半導体フォトニックナノ構造を中空GaNスラブに作製できることを示唆しており、今後、中空スラブ型GaN二次元フォトニック結晶光源を可視光領域において実現する上で重要な研究進捗となっている。以上のことから、現在までの進捗状況は、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、発光分光測定に基づく光学的評価、数値解析に基づく分析を進めることで、GaN中空状マイクロディスク共振器を基軸としてGaN中空状スラブの評価・分析技術の開発を進める。また、InGaN量子井戸を埋め込んだ中空状GaN二次元フォトニック結晶スラブ共振器の作製にも取り組むことで、スラブ型GaN二次元フォトニック結晶共振器レーザーの実現に向けた課題の具体化と改善策を検討する。特に、光学評価技術の改良においては、独自に構築してきた顕微フォトルミネッセンス測定系の改良を行う予定である。前年度の研究では、顕微フォトルミネッセンス測定系における、対物レンズの開口率や、分光器の波長分解能が十分ではなく、作製したマイクロディスク共振器のQ値は特定できていない。また、その分析手法についても確立できておらず、時間領域差分法におけるマイクロディスク共振器のQ値の律速要因は明らかではない。次年度においては、これらの評価・分析に関する技術に重点を置いて、マイクロディスク共振器のQ値に基づく、中空状GaNスラブ品質の定量的な評価技術を確立する。また、前年度に開発した作製法における中空状GaNスラブ構造の更なる品質改善に向けた指針を明らかにする。特に、当該作製法においては、スラブ裏面の構造的評価も重要となるため、中空状GaNスラブを基板から切り離し、裏返すことで、スラブ裏面の顕微鏡観察を可能とする技術の開発も行う。以上のように、中空状GaNスラブの評価技術の開発と、作製法の改良を進めることで、GaNスラブ型二次元フォトニック結晶共振器レーザーの実現を目指す。
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