2021 Fiscal Year Research-status Report
Realization of high-efficiency energy conversion in solar cells using photon up-conversion
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20K14792
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朝日 重雄 神戸大学, 工学研究科, 助教 (60782729)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽電池 / フォトンアップコンバージョン / 量子ドット / ガリウムヒ素 / 中間バンド型太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の太陽電池の主流である単接合型太陽電池の変換効率は理論的に約30%に制限される。その理論変換効率を超える太陽電池のアイデアがいくつか提案されているが、我々は2個の低エネルギー光子から1個の高エネルギー電子を生成する2段階アップコンバージョン(TPU)現象を利用した、2段階フォトンアップコンバージョン太陽電池(TPU-SC)を提案した。本研究では、アップコンバージョンによる電流上昇効率を現状からさらに10倍向上し、変換効率向上に寄与することを目的とする。 1年目は変調ドーピングによるアップコンバージョン効率の向上を実証することを行った。その結果、約3倍のアップコンバージョン効率の向上に成功した。また、アップコンバージョンによるヘテロ界面での擬フェルミ準位分裂の実験観測に成功した。これは、ヘテロ界面における赤外線吸収により、低エネルギーフォトンの光エネルギー変換が可能であることを示している。2年目は、ヘテロ界面に挿入した量子ドットの位置によるアップコンバージョンへの変化を調べた。その結果、量子ドットの位置を最適化することでアップコンバージョン効率がさらに3倍以上向上することを見出した。これにより、当初の目標であったアップコンバージョン効率の10倍向上が見えてきた。一方、ナローギャップ半導体に正孔のバリア層を設けることで、電子と正孔の分離を促し、ヘテロ界面に蓄積する電子密度の向上を図ったが、このバリアによりヘテロ界面での電子密度が減少することが分かり、この構造は適切ではないことが分かった。 一方、ホールのアップコンバージョンを利用したアップコンバージョン太陽電池の電流減少メカニズムも継続して取り組んでいる。アップコンバージョン遷移後の状態で、実効的なエネルギーバリアにより、正孔の取り出しが阻害される可能性を見出した。来年度も引き続き解明に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はまず、昨年度見出した変調ドーピングによるアップコンバージョン効率の再確認を行った。その結果、変調ドーピングの位置によっては、ヘテロ界面の電子の再結合を促すため、アップコンバージョン効率が大きく低下することが分かった。また、ナローギャップ半導体の部分に正孔のバリアを挿入することで、ヘテロ界面の電子の再結合を抑制することを試みたが、逆にヘテロ界面の電子密度が減少することが分かった。しかし、その結果によりさらに新たな構造の着想に至ったため、その構造の検証を来年度行う。また、ヘテロ界面に挿入する量子ドットの位置変化によるアップコンバージョン効率への変化能検証を行ったところ、量子ドットの位置の変化により、アップコンバージョン効率が3倍以上向上することを見出した。これにより、当初目標であるアップコンバージョン効率の10倍向上の達成が見えてきた。 一方、ホールのアップコンバージョンを利用したアップコンバージョン太陽電池の電流減少メカニズムに対しても継続して取り組んでいる。この太陽電池では、アップコンバージョン発生時と非発生時の光電流の温度依存性から求めた活性化エネルギーより、アップコンバージョン遷移後の状態で、実効的なエネルギーバリアにより、正孔の取り出しが阻害される可能性を見出した。これについては、来年度も引き続き解明に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のヘテロ界面に存在する量子ドットの位置でアップコンバージョン効率が3倍以上増加することが分かった。量子ドットの位置をさらに最適化することで、効率がさらに向上する可能性があり、その見極めを行う。また、正孔のバリアによる再結合の抑制の結果から、電子と正孔を完全に分離する新たな半導体構造の着想に至ったため、その新たな構想の検証を行う。また、正孔のアップコンバージョンでは電流が減少することが分かっているが、そのメカニズムの解明と引き続き行う。 一方、今までガリウムヒ素とアルミニウムガリウムヒ素という、III-V族半導体によるアップコンバージョン太陽電池の製作及び検証を行ってきたが、別材料におけるアップコンバージョン現象の発現を目指す。今のところナローギャップ半導体にシリコン、ワイドギャップ半導体にはペロブスカイト材料を用い、量子ドットについてはコロイド量子ドットを用いることを計画している。今年度中に試作太陽電池の作製手法の確立を行う。
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Causes of Carryover |
当初、国際会議に参加し、研究成果を発表するすることを計画していたが、研究成果を今年度予定指定している実験結果と含めて発表するため、国際会議への参加を今年度に回すことにした。
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Research Products
(10 results)