2020 Fiscal Year Research-status Report
Si/SiO2界面状態の制御による熱伝導率変調技術の開発
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20K14793
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
富田 基裕 早稲田大学, 総合研究機構, 次席研究員(研究院講師) (90770248)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 半導体 / 熱伝導 / シリコン / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで分子動力学(MD)計算を用いて、Siナノワイヤ(Si-NW)の表面にSi結晶に酸化膜を付与しその酸化膜の膜厚を厚くすることで熱伝導率が減少することを報告していたが、一方、酸化を行う結晶方位が熱伝導率にどのような影響を与えるかという研究は前例がなかった。そこで、MD計算で酸化の結晶方位を変えたSi/SiO2モデルの熱伝導率を作成・比較し、酸化面方位が熱伝導率に与える影響を評価した。 結果として、{110}、{111}面は{100}面に比べ熱伝導率の下がり幅が大きいことが判明した。これは、SiO2による熱伝導率の減少率が確かに酸化する面方位に依存していることを示している。なお、面方位によって熱伝導率の下がり幅が変動する原因は、それぞれの面方位によってSi/SiO2界面にSiO2が誘起する平均の引張応力が強くなっているためだと考えている。 フォノン分散を確認すると、より熱伝導率の下がる面方位ではフォノンの分枝がよりブロードニングを起こしていることも確認できた。フォノン分枝の線幅はフォノンのライフタイムと直接関係しているため、この点からも酸化面方位による熱伝導率変化の違いを説明できる。 よって、面方位の選択だけでなく、SiO2の作製プロセスの選択においてもSiO2が誘起する平均の引張応力をいかにコントロールするかが重要であると推察される。また、SiO2が誘起する平均の引張応力が熱伝導率の変化に大きく寄与していることから、SiO2の密度をコントロールするように作製プロセスの選択および調整を行うことが重要ではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計算面での影響はほとんどなかったが、コロナ禍の影響により、SOIウェハの調達が大幅に遅れ、実験施設へのアクセスも制限がかかっているため、実際のSi/SiO2界面サンプルの作製がいまだに実施できていない。そのため、3DアトムプローブおよびTEMを用いた界面の解析や、ラマン分光法を用いた実際の熱伝導率変化の評価が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度でコロナ禍によって遅れた実験面の計画を急ぎ推し進め、実サンプルの作製、3DアトムプローブおよびTEMを用いた界面の解析や、ラマン分光法を用いた実際の熱伝導率変化の評価を2021年中に実施し、どの酸化手法を使えば、あるいはどの追加処理を行えば熱伝導率が下がるのか、あるいは上がるのかを体系的にまとめるところまでを今年度の目標とする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、SOIウェハの調達が大幅に遅れ、実験施設へのアクセスも制限がかかっているため、実際のSi/SiO2界面サンプルの作製がいまだに実施できていない。そのため、3Dアトムプローブの外注評価が行えておらず、外注にかかる費用が使用できなかったため、前年度の使用計画から大きなずれが発生している。 今年度、急ぎサンプルの作製を行い、3Dアトムプローブやその他実験を行い、2年間で使用するはずだった通りの予算執行を計画している。
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