2021 Fiscal Year Research-status Report
残留応力を伴う場でのカタストロフィック破壊の全過程を予測可能な数値解析手法の開発
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20K14812
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
廣部 紗也子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター), 特任研究員 (50837565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動的破壊解析 / 残留応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、構造物のカタストロフィックな破壊の全過程の詳細な予測のため、固体連続体の動的破壊進展過程における残留応力の解放と再分配を厳密に評価できる理論の確立、および「不均一な塑性変形による残留応力場の発生」と「残留応力を伴う自己つりあい場での動的破壊進展」を同時に扱える動的弾塑性破壊進展解析手法の開発を行う。また、これらの理論と数値解析手法を用いて、本研究が提案する「残留応力を伴う自己つりあい場の僅かな乱れを引き金とする材料の動的破壊」が、ダメージが蓄積した構造物のカタストロフィックな破壊過程の支配的な要因であるという仮説の正否を検証し、新たな工学的知見を得る。 本年度は、実大構造物のカタストロフィックな破壊過程の解析を大型並列計算機ではなく、PCワークステーションで行えるようにするため、解析コードの大規模高速化を実現した。解析コードの大規模高速化のため、OpenMP並列化効率の向上、時間積分スキームの低精度化、メモリ量削減のためのデータ構造の見直しを行った。これにより、計算速度を4~5倍速に向上させるとともに、使用メモリ量を約56%削減した。また、時間積分スキームの精度検証も行い、これまで使用していた4次バイラテラルシンプレクティック積分法を、低精度の1次シンプレクティック積分法に変更し破壊解析を行なっても、破壊パターンのグローバルな構造には影響を与えないことを確認した。 以上に加え、解析コードのMPI化にも着手しており、計画当初には予定していなかったスーパーコンピューターへの解析コードの実装を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を変更し、計画3年目に予定していた解析手法の大規模高速化を行った。この大規模高速化に関して計画ではOpenMPによる並列化のみを想定しており、約3億自由度の解析をPCワークステーションで行うことを目標としていたが、想定よりメモリの削減と高速化を行えたため、6億自由度を超える計算が可能となっている。また、当初計画になかった解析コードのMPI化にも着手しており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当初計画を変更し、3年目に予定していた大規模高速化を行った。今年度中に着手した解析コードのMPI化が完成途中のため、今後は解析コードのMPI化とスーパーコンピューターへの実装、当初計画2年目に予定していた、「不均一な塑性変形による残留応力場の発生」と「動的破壊進展に伴う残留応力場の解放と再分配」を同時に扱う動的弾塑性破壊進展解析の理論的枠組みの構築、および面内応力分布を付与した熱強化ガラスの破壊実験による解析コードの妥当性検証も引き続き行なっていく。 動的弾塑性破壊進展解析の理論的枠組みに関して、亀裂面形成によるエネルギー散逸を伴うHamiltonianの時間発展における、永久ひずみと残留応力の取り扱い方法については、ここまでの「残留応力場を伴う場における動的破壊進展解析手法」の開発過程で明らかにされている。そのため、このステップにおける最大の課題は、「弾塑性体の動的変形過程におけるHamiltonianの定義」、「亀裂進展を伴う弾塑性体挙動のモデル化」である。そこで、「材料の塑性化に伴う応力変化と等価な節点力」および「不均一な塑性変形分布に対応する等価介在力」の定式化を行い、正準方程式に取り入れることを予定している。 さらに、破壊に伴うそれらの力の変化を厳密に評価するための仕組みを導入することで、残留応力場を伴う場における動的破壊進展解析でも用いている粒子離散化有限要素法(PDS-FEM: Particle Discretization Scheme Finite Element Method)に弾塑性構成則を組み込んだ実装を実現する。
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Causes of Carryover |
今年度、予定していた熱強化ガラスの動的破壊実験を行なわず、3年目の計画にあった解析コードの大規模高速化を行ったことと、新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた学会が中止になったことにより、次年度使用額が生じた。 残留応力場における動的破壊メカニズムの知見(亀裂進展経路が残留応力場の影響を受ける仕組み)を得るためには、面内残留応力分布を付与できる熱強化ガラスの動的破壊実験解析が必要であるといえるので、翌年度この実験を行うとともに、学会発表を積極的に行う。
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