2021 Fiscal Year Research-status Report
不飽和土内の液架橋分布が強度・変形特性に与える影響の解明と構成モデルの構築
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20K14825
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木戸 隆之祐 京都大学, 工学研究科, 助教 (40847365)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液架橋 / バルク水 / 配位数 / 存在形態 / 不飽和砂 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,不飽和砂の三軸圧縮試験にX線CTと画像解析を適用して得られた土粒子構造,および間隙水の分布を特定した画像2種類を用いて,個々の間隙水の配位数を調べる解析を行い,新たな成果を得た.以下にはその具体的内容を述べる. 不飽和土内部の間隙水の存在形態は,液架橋とバルク水に大別される.一般に,前者は2粒子間を引き付けるbonding効果に寄与し,後者は主として有効応力のように等方応力として土骨格を強くする効果に寄与するといった役割の違いがあると考えられている.これまで本研究グループでは,個々の連続性を有し比較的小さな体積を示す間隙水を液架橋と仮定し,せん断変形に伴いその数が減少していく傾向と,それが応力ひずみ関係におけるひずみ軟化挙動と対応していることを明らかにしている.一方,液架橋かバルク水かを厳密に分類していなかったため,変形レベルに応じてどれほど液架橋が軸差応力に寄与しているかは十分調べられていなかった. 上記2種類の間隙水の存在形態を考えると,液架橋は「2粒子間に存在する間隙水」,バルク水は「3粒子以上に接触する間隙水」と見なせる.そこで本研究では,不飽和砂の三軸圧縮試験で得られたCT画像から,個々の土粒子と間隙水を識別するクラスタラベリングを実施し,それら画像を用いて「個々の間隙水が何個の土粒子と接触しているか(間隙水の配位数)」を調べる画像解析を行い,各配位数の頻度を明らかにした.その結果,飽和度60%以下の不飽和砂内部では,配位数2(液架橋)の存在割合が最も多く,次いで配位数3, 4以上のバルク水の存在割合が多いことがわかった.また,せん断変形に伴い配位数2の水の存在割合が増減すると,配位数3の水の存在割合が減増するという負の相関関係が見られた.これは液架橋同士が結合すること,バルク水が液架橋に分離するといった間隙水の存在形態の変化を表すと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不飽和砂の軸差応力変化に対して,液架橋がどのように寄与するかを議論する上で,液架橋とバルク水を厳密に分類することが重要と考えていたが,CT画像を使ってそれらをどのように分類するか,という手法・アルゴリズムの構築に想定よりも時間を要した.構築後も,一つ一つのケースに対して画像解析に数日かかるプロセスがあり,合計36ケースに適用する必要があったため,アウトプットまでの時間も要した.ただし,得られた成果に関しては世界的に見ても類を見ない成果であり,これまでよりも深い議論が可能になったことを考慮すると,当初計画において想定した以上の成果が得られたと考える. 一方,当初計画では水分保持特性試験を実施し,液架橋割合の変化を明らかにすることを目標としていたが,上記のようなアルゴリズム構築に時間を要したため,分析を行うことができず,構成式への反映までは実施することができなかった点で,当初よりも遅れをとっている状況と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたせん断変形に伴う液架橋の存在割合の変化を構成式に反映し,実際の応力ひずみ関係を表現できるかどうかを検証していくことを目標とする.そのために,今回は不飽和砂の三軸圧縮試験で得られたCT画像を用いて分析を行ったが,密度は一定で飽和度が変化する水分保持特性で取得したCT画像を用いて分析を行い,水分量のみが変化する場合の液架橋の存在割合を明らかにすることが重要と考える.
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Causes of Carryover |
当初の予定では,2021年度にイタリアとオーストラリアで行われる国際会議に参加するための旅費を計上していたが,新型コロナウイルスの影響でオンライン開催を余儀なくされた.そのため旅費を執行することなく次年度使用額が生じた.次年度は,CT画像解析を行い得られたデータを保管するための外付けSSD(容量3TB)をはじめ,実験に必要な消耗品(メンブレン,キムタオル,シリコングリス),そして研究協力者である菊本教授(横浜国立大学)との打ち合わせのために京都-横浜間の出張旅費に使用する予定である.そのほか,国際会議の参加登録料,国際ジャーナル投稿料として支出する.
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Research Products
(2 results)