2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of stability evaluation method for masonry retaining walls against multi-hazards of earthquake and rainfall
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20K14827
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
橋本 涼太 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (60805349)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 石積壁 / 大変形 / MPM-DDA |
Outline of Annual Research Achievements |
石積壁などの柔な壁面を持つ抗土圧構造物は、変形を許容する構造であるため変形量に基づく維持管理が重要である。特に近年、地震を経験し変形を生じた後に強い雨によって崩壊に至った事例が見られ、地震後の変形量とその後の浸透時の耐久性を評価する手法が必要である。本研究では、研究代表者が開発してきた離散体-連続体の相互作用解析技術に不飽和地盤の力学理論を融合・発展させ、地震による擁壁の変形から再度の地震または降雨といった次の外力による崩壊に至るまでの挙動を一連の流れで解析する技術の開発を目指す。 令和3年度は、石積壁の崩壊後の石材および背面地盤の大変形領域での解析を可能にするため、従来より開発を進めてきた離散体-連続体連成解析技術(マニフォールド法-不連続変形法連成解析)を、固体の大変形解析手法であるMaterial Point Method (MPM)を用いて拡張した。MPMは連続体を質量と体積を持つ物質点に離散化し、それとは別に用意した有限要素メッシュに物質点の物理量を投影して運動・変形を解く手法である。本研究では、これまでマニフォールド法(NMM)-不連続変形法(DDA)連成解析で地盤の連続体モデルとして用いているNMMに替えてMPMを使用したMPM-DDA連成解析手法を開発した。MPMの物質点とDDAのブロックの間の接触を定義し、ペナルティ法で処理することで両者の相互作用解析を可能にしている。また、MPMにDDAと同じく運動方程式の時間離散化にNewmarkのβ法による陰解法を用いることで、両者の同時かつ一体的な解析が実現された。開発したMPM-DDAの妥当性は既存のブロック積擁壁の崩壊模型実験を定量的に再現できることから確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度取り組んだMPM-DDA連成解析の開発により、離散体解析であるDDAでモデル化された石材だけでなく、背面地盤の崩壊時も含めた大変形解析が可能となった。これは、本研究開始当初は計画になかった事項であるが、石積壁の崩壊メカニズムを明らかにしていく上で重要な技術であり、計画以上の進展があったと言える。今後、MPMでモデル化した部分を不飽和浸透-変形連成解析に拡張することで、浸透-変形連成場での石積壁の崩落をより適切に表現できると期待される。なお、今年度行った検証解析は自重条件下での崩壊実験を対象としたものであり、地震応答解析への適用性は別途検討を要する。 ただし一方で、開発手法の検証のための海外研究機関で実施予定の模型実験については引き続き、新型コロナウイルス感染症による渡航上の制約により実施が難しい状況にある。したがって、本年度の状況を踏まえ、開発手法による数値解析的をベースにした検討に全体計画をシフトさせる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、新型コロナウイルス感染症の影響により現地調査や海外研究機関での実験実施については引き続き困難な状況が続いている。したがって、これまでに開発した解析手法を用いた数値実験によって石積壁の崩落メカニズムを明らかにすることをメインに据えるよう最終年度の計画を変更する。まず令和3年度までに開発したMPM-DDAを用いて、既往の石積壁の模型振動台実験の再現解析により当該手法の地震応答解析に対する適用性を検証する。また、降雨と地震のマルチハザード下における挙動評価は、MPM-DDAの浸透-変形連成解析への拡張を進める一方で、既に開発済みのNMM-DDAによる数値実験を遂行し、石積壁の維持管理のための知見の蓄積を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大により、当初計画していたオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学での模型実験が実施されなかったためである。 最近、渡航の制約は緩和されつつあるものの、多業務との兼ね合いもあり、自由な渡航の見通しは立っていない。したがって、本年度の状況を踏まえ、開発手法による数値解析的をベースにした検討に全体計画をシフトさせつつ、必要に応じて国内にて模型実験を実施することとし、その準備と実施に予算を充てる。
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