2020 Fiscal Year Research-status Report
高潮偏差の潮汐依存性に関する新たなパラメータの導出とメカニズムの解明
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20K14839
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井手 喜彦 九州大学, 工学研究院, 助教 (60866680)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高潮偏差 / 理論式 / 潮汐 / 台風 |
Outline of Annual Research Achievements |
台風来襲時の潮汐位相が異なることで水深が変化し高潮偏差に影響を与える.その定量的な説明には,従来の式では不十分であり水深の空間変化を考慮することが重要であることが分かった.そこで,水深勾配を考慮した新たな解析解を導出し,高潮偏差に対して水深勾配や潮汐による水深変化が及ぼす影響度の指標を提案した.数値シミュレーションモデルでの結果と比較し,提案した指標が妥当であることを確認した後,指標を用いて高潮偏差に関する湾の特徴を明らかにした.以下,実施した具体的な研究内容を述べる. まず有明海を対象として,数値シミュレーションモデルを構築し,モデルの精度検証を行った.モデルが高精度で観測を再現可能であることを確認した後,本モデルを用いて潮汐位相の違いが高潮偏差に及ぼす影響を調べた.その結果から,従来の式を用いた場合,十分な説明ができないことが分かったため,従来の式では考慮されていない水深勾配を含んだ新たな式を提案した.この式を用いることで,潮汐位相が高潮偏差に及ぼす影響を定量的に説明できることが分かった.また,新たな解析解を得たことで,潮汐の下で生じる高潮偏差について,物理的な理解を深めた. さらに,新たな式を用いて,湾が持つ高潮偏差の潮汐依存性の強さを表す指標と水深勾配による高潮偏差の増幅率を表す指標を導出した.これらの指標を用いて,日本の主要な湾である東京湾・伊勢湾・大阪湾および有明海について,湾の特徴を調べた.これによって,例えば将来的に海面の水位が上昇するとその湾で生じる高潮偏差はどのように変化するのかなどを簡易的に把握することができる.したがって指標を用いた湾の特徴の把握は,今後の防災・減災にための対策を考える上で有益である. これらの成果は,2020年海岸工学講演会で発表した.また,Coastal Engineering Journalへ投稿し2021年1月に受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値シミュレーションモデルによる検証から理論式の構築,および理論式から導出した指標を用いた日本の主要な海域の特徴の把握は2020年度の目標であり,これは100%達成した.さらに,ここまでの成果をまとめ,すでにジャーナルに掲載されていることより,当初の計画通り順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでは各湾全体の大まかな特徴を把握したが,今年度はより詳細な数値シミュレーションモデルを用いて潮汐の影響をより細かく検討する.特に,水位だけではなく流れも含めた複雑な現象に着目する.これにより,局地的に生じる高潮発生のメカニズムについて理解を深め,高潮防災を考える上でより重点的に警戒すべき地点などを把握する. また,構築した理論式にはまだ不十分な点があり条件によっては精度が十分ではない場合もある.したがって,理論式を発展させより精度の高い指標への改良にも取り組む予定である.
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Research Products
(2 results)