2020 Fiscal Year Research-status Report
マッチングの不確実性を考慮した乗り合い式ライドシェアリングサービスの便益評価手法
Project/Area Number |
20K14842
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
加藤 哲平 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10827116)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ライドシェアリング / 不確実性 / マッチング / 需給均衡分析 / 便益評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
交通混雑による経済損失と環境負荷の増大といった問題の解決に向けて,乗り合い式Ride Sharing(RS)サービスが近年注目を集めている.RSサービスは,利用者同士のマッチングを行うため,サービス利用時の移動経路(移動時間)の不確実性が存在する.こうしたサービスの特性を考慮した便益評価手法の構築に向けて,本年度は継続的な研究レビューとともに,以下の3つを行った. (1)ランダム効用理論に基づくRSサービス導入時の利用者行動と,利潤最大化に基づく供給者行動をモデル化した.これにより,便益評価に必要な需給均衡分析に関する基本的なフレームワークが構築された. (2)RSサービス車両の巡回経路と利用者・車両のマッチングに関するルールを仮定し,巡回経路のトポロジカルな性質を用いることで,サービス利用時における確率的な移動時間や乗り合いの生起確率を近似的に計算する手法を構築した.(1)と組み合わせることで,RSサービスのシステムを通して決定される移動時間と需要者・供給者行動を統合的に分析することが可能となった. (3)数値計算を用いて,構築したモデルの妥当性を示すとともに,RSサービスの設計に関する考察を行った.結果として,移動時間と移動費用にはトレードオフの関係が存在することが示された.また,構築した手法を用いることで,社会的に最適なサービス水準の決定が可能であることが示された. 本年度構築した手法は,「最も利用者に近い車両が割り当てられる」・「現在地から近い目的地を順に巡回する」という仮定を設けているが,これにより非現実的な経路が生成されてしまう可能性がある.次年度以降,到着時間制約の中で経路を決定する枠組み等への拡張を行い,より現実的な状況を考慮可能な手法の構築を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標通り,経路の不確実性を考慮したRSサービスの費用便益分析に向けた基本的なモデルを構築した.ただし,新型コロナウイルス感染拡大の影響で,研究成果の投稿を行った査読付き国際学会が中止となったため,研究成果の公表が当初の計画よりも遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築したモデルを拡張し,より現実的な状況を考慮した手法を構築する.具体的には,到着時間制約の中でRSサービス車両が経路を決定する状況を考慮可能なモデルを構築する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,参加を予定していた学会が中止・延期となり,出張費を使用しなかったため.次年度使用額は,関連する国際会議への積極的な参加および学術雑誌投稿料・英文校正費用への使用を計画している.
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