2020 Fiscal Year Research-status Report
下水由来毒性物質群の特性解析と即時モニタリング指標の開発
Project/Area Number |
20K14859
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
原 宏江 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (70823524)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 下水由来フミン物質 / 下水再利用 / 未規制化学物質 / 細胞毒性 / 蛍光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水の循環利用における未規制化学物質の制御・監視は世界共通の課題である。本研究では、下水再利用システムにおいて優先的に制御・監視すべき微量化学物質に関する情報を得ることを目的として(1)下水由来フミン物質の特性解析とヒト細胞への作用機構の解明、(2)下水由来毒性物質群の即時モニタリング指標の開発,、を行う。本年度は、上記(1)に関して、「①下水由来フミン物質の特性解析」および「②下水由来フミン物質の作用機構の解明」に取り組んだ。 ①下水由来フミン物質の特性解析 2つの異なる実下水処理場において最初沈殿池流出水および放流水を採取し、固相抽出カラム(OASIS MCXおよびMAX)を用いて酸性(HOA)、塩基性(HOB)、中性(HON)の画分に分け、それぞれついて細胞毒性試験および水質分析を行った。ヒト肝癌由来細胞株(HepG2)を用いた細胞毒性試験では、HOAを暴露した細胞群においてのみ20%程度の細胞生存率の低下が見られた。一方、3次元励起蛍光分析では、HOAにおいてフミン物質の領域に出現するピークの面積が全体の40~48%を占め、HOB及びHONと比較して高かった。 ②下水由来フミン物質の作用機構の解明 水の循環利用において健康影響が特に懸念される化学物質として、3種の医薬品(エストロン、17βエストラディオール、カルバマゼピン)を対象とし、個別および下水由来の疎水性有機画分(上記①と同様に取得)共存下で細胞毒性試験を行うとともに、水晶振動子マイクロバランス(QCM)により相互の吸着量を調べた。結果、相加・相乗的な細胞毒性作用は確認されなかったものの、17βエストラディオールへのHOBの吸着量が多いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は感染対策のため実験室での活動に制約があり、通常よりもデータ取得に時間がかかってしまった。具体的には、遺伝子発現解析が予定通り完了できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現解析は、本研究課題のような亜致死濃度での細胞影響評価において重要であり、次年度に優先的に取り組む。次年度新たに着手するテーマ((2)下水由来毒性物質群の即時モニタリング指標の開発)では、インラインLC-EEMシステムにおいて、下水由来毒性物質群を高感度に検出可能なLC条件の探索を行うが、既往文献およびこれまでに得られたデータを活用して条件出しを行うことで、探索作業を最大限効率的に進める予定である。
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