2021 Fiscal Year Research-status Report
針葉樹を基材とする型枠用合板の品質向上とこれを用いた型枠の施工方法に関する研究
Project/Area Number |
20K14875
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Research Institution | Institute of Technologists |
Principal Investigator |
荒巻 卓見 ものつくり大学, 技能工芸学部, 助教 (70821982)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンクリート型枠用合板 / 針葉樹合板 / ラワン合板 / 吸水防止材 / 劣化抑制 / 含水率 / 曲げヤング係数 / 屋外暴露試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では,吸水防止材の適用によるコンクリート型枠用合板(以下,合板という)の劣化抑制効果を明らかにするために,各種吸水防止材を塗布した合板の屋外暴露試験を実施し,屋外環境下での合板の品質変化を調査した。実験では,昨年度の研究成果を踏まえて,成分,溶剤タイプおよび塗膜タイプが異なる市販品を中心とした計5種類の吸水防止材を対象とし,各種吸水防止材を合板裏面に塗布した試験体を用いて4ヶ月間の屋外暴露試験を行った。その結果,本研究の範囲内で次の知見が得られた。1)吸水防止材により付与された合板の撥水性は,屋外環境下で4ヶ月程度まで保持することができる。2)吸水防止材を塗布した合板の吸水抑制効果の持続性は,造膜タイプの吸水防止材よりも含浸タイプの方が高い。3)吸水防止材を塗布することで屋外環境下における含水率の上昇を抑制することが可能であり,吸水抑制効果が高いものほど,その効果が高い。なお,吸水防止材が無塗布の場合,針葉樹合板の屋外環境下での最大含水率は約32%となり,ラワン合板の約22%と比べて顕著に高い傾向を示した。4)吸水防止材を塗布することで合板の変形(ねじれなど)をある程度抑制することができる。これらのことから,合板の屋外環境下での劣化を抑制する方法として,吸水防止材の適用が有効な方法の1つであることが確認された。 また,上記の検討に加えて,合板の含水率と曲げヤング係数の関係を実験的に確認し,吸水防止材を塗布した場合の屋外環境下での曲げヤング係数の変動について検討した。その結果,屋外環境下における針葉樹合板の曲げヤング係数は,吸水防止材が無塗布の場合,降雨による含水率の上昇により気乾状態(4.1 GPa)の約0.68倍まで低下するが,吸水防止材を塗布することで,最大で約0.85倍までの低下に抑制できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究では,1年目(2020年度)の研究成果を踏まえた追加検討項目として,各種吸水防止材を塗布した合板の屋外暴露試験を実施し,前項に示した研究成果を得ることができた。一方で,合板の転用に伴う品質変化および転用した合板を用いたコンクリート表面の仕上がり状態に関する実験的検討は,2021年度に研究成果のとりまとめを行う予定であったが,前述の追加検討項目を優先して研究を進めたことから,研究開始当初の計画から若干の遅れが生じている。しかしながら,合板の転用の影響に関する実験は,2021年度の後半から着手しており,引き続き研究を進めるとともに,次年度以降に研究成果を発表できる見通しである。以上より,本研究課題での主要な検討項目は,計画どおりに遂行できる見込みであり,おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では大別して次の2項目について検討する。1)合板の転用の影響に関する検討では,針葉樹合板に加えて,従来一般的に使用されてきたラワン合板を対象として,合板の転用を10回程度まで行い,合板の転用に伴う品質変化ならびに転用した合板を用いたコンクリートの表面色,色むらおよび表層品質などの仕上がり状態を定量的に把握する。また,この実験結果に基づき,コンクリートの仕上がりの要求性能に応じた転用回数に関する指標の構築を目指す。2)型枠の設計・施工方法に関する検討では,型枠の使用材料とその構成方法が型枠の変形およびコンクリート部材の寸法精度や表面の仕上がりの平たんさに及ぼす影響についての実施工を想定した実験の結果を整理した上で,これまでに得られた知見を総合的に検討し,合板の品質や転用の影響などを加味した型枠の設計・施工方法を提示することを目指す。
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Research Products
(4 results)