2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on defect detection method by acoustic irradiation induced vibration from UAV equipped with sound source
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20K14877
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
上地 樹 桐蔭横浜大学, 工学研究科, 研究員 (30766861)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / UAV / 音響照射加振 / 欠陥探査 / 非接触音響探査法 / 外壁タイル / 実構造物 |
Outline of Annual Research Achievements |
R4(2022)年度は、主としてR3(2021)年度に実施されたUAVを用いた探査実験データに関する検討・解析が実施された。検討・解析の対象とした実験は、神奈川県の未来創生課の協力を得て行われた藤沢土木事務所汐見台庁舎における実験(2021年12月実施)、および民間の大規模修繕コンサルタントの協力を得て行われた神奈川県鎌倉市の民間マンションにおける実験(2022年2月実施)の2つである。どちらも、外壁タイル内部の欠陥検出を目的とした、UAVを用いた非接触音響探査法の実験である。 汐見台庁舎においては、使用されていた外壁タイルが、通常のマンション等で用いられるものよりも厚いものであったために、欠陥部の検出はやや困難であったものの、事前の打音点検で検出された欠陥部とほぼ同じ位置に欠陥部の共振が捉えられていることが明らかになった。また、鎌倉市の民間マンションにおける実験では、明確に検出された欠陥部は1か所だけであったが、データ解析の結果からUAVから送信された音響信号により加振された箇所であったことが明らかになり、これは実際に人が居住している建築物に対する初めての欠陥検出結果となった。なお、2022年の10月にはこれらの結果をもとに、日本非破壊検査協会の秋季講演大会において発表を行っている。また、2022年度においても探査実験の実施を検討していたが、実際にはUAVを使用できるような検査対象物件を見つけることができなかったため、研究期間の1年間延長を申請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実構造物に関する検証実験検査に関しては、実施予定であったものの、残念ながら2022年度は適切な探査対象を見つけることができなかった。そのため、研究期間を1年間延長することにより、R5(2023)年度における検証実験の実施を目指している。 また、周囲環境騒音を減少させるためにUAVに搭載された音源後部には防音用のカバーが取り付けられていたが、この防音用カバー内からの反射音波と放射音波が干渉することにより、UAVに搭載された音源から放射される音波がひずむという現象が確認された。そのため、音源後部のカバーを取り外す作業を実施することにより、入力波形に近い音波が放射可能であることを確認した。しかしながら、その結果として、UAVの機体後方へも機体前方と同様な音波照射が行われることになる。そのため、UAVの機体後部にも人が居住する建物がある場合には防音対策が必要であることも明らかになった。 計測可能距離については、鎌倉市の民間マンションにおける実験結果より、LDVから計測壁面までの距離約17~25 m (角度約11~41°)でも、実施可能であることが確認されている。 その他の問題として、UAVに搭載されたレーザ距離計における距離データの遅延や、搭載された照準用レーザポインターの不点灯および、搭載アンプの音量調整用つまみの不具合など様々な実用上のトラブルが発生したものの、それぞれ個別に検証解決して現在に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
R5(2023)年度については、民間の大規模修繕コンサルタント会社の協力を得て、静岡県熱海市にある8階建のリゾートマンションが、実験対象候補となっている。既にマンションの管理組合からは実験許可が得られているため、実験準備を行っている。この建物は外壁タイルが施工されているが、建築後30年近くたっていること、および海に面していることなどから、潮風の影響により剥離や亀裂等の劣化が進んでいることが予測される。そのため、UAVを用いた非接触音響探査法における適用性の検証に適していると考えられる。また、赤外線カメラを搭載したUAVによる検査も実施予定であるため、可能であれば、検査結果の比較も実施される予定となっている。 なお、このマンションにおける事前の下見結果から、LDVと測定面までの距離は約17~25m(角度約17~50°)と2022年2月に行われた鎌倉市の民間マンションにおける計測距離や角度と近いことが明らかになっており、計測可能距離の再検証が行われる予定である。 本手法では計測にUAVを用いている関係で基本的に実験時には飛行許可を取る必要があるだけでなく、民間マンションであれば住民の合意も必要とされるため、どこでも実施できるわけではない。またUAVを用いた計測手法は最近発達してきた新しい技術であり、データの積み重ね等まだまだ足りない部分がある。そのため今回予定している実験も含め、貴重な実験の機会を逃さず今後とも実験データの蓄積を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
R4(2022)年度はR3(2021)年度に取得したUAVを用いた探査実験のデータの検討解析・解析およびそれらの結果もとに学会発表を主に行うことになったが、新たな実構造物を対象とした探査実験の実施も検討していた。しかしながら、UAVを用いた検査法を行うに適した対象を見つけることが出来なかったため実験を実施することが出来ず、1年間の研究期間の延長を申請することになった。これに伴い昨年度使用予定であった、旅費を伴う学外実験における費用支出額を、次年度へ繰り越すという形となった。 R5(2023)年度は、民間の大規模修繕コンサルタント会社の協力にもと、静岡県熱海市にある8階建のリゾートマンションを対象とした検証実験を実施すると同時に学会発表も順次実施していく予定である。
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