2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on ductility evaluation for glulam bracing shear wall with steel-plate-inserted joint
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20K14881
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Research Institution | National Institute for Land and Infrastructure Management |
Principal Investigator |
秋山 信彦 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (20806054)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集成材 / 鋼板挿入ドリフトピン接合 / ブレース耐力壁 / 靭性能 / 割裂補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、標準的な耐震要素のひとつである鋼板挿入式集成材ブレース耐力壁を対象として、大地震時の安全性担保に重要な指標の一つである靭性能の評価方法を確立すべく、塑性変形要素である鋼板挿入ドリフトピン接合について、急激な耐力低下に招く割裂破壊を抑制するために、全ねじスクリューを割裂想定線においてドリフトピンの両側に打ち込む補強仕様の有効性を実験的に把握した。 実験変数は全ねじスクリューの打込み本数(1か所当りに打ち込む本数をスリットから両側に20mmピッチで4本と2本の2種類)と打込み深さ(割裂想定線からの深さで32mmと16mmの2種類)などを用意した。実験時には表面ではなくスリット内部のひずみ分布を計測するため画像相関法ではなくひずみゲージをスリット内部の割裂想定線に貼付して繊維直交方向のひずみ分布を計測した。 得られた主な結果を後述する。4本打込んだ仕様で打込み深さが32mmと16mmを比較すると、32mmでは割裂破壊が生じなかったのに対して、16mmでは全ての試験体で生じた。このことより、打込み深さに比例する全ねじビスの引抜耐力と割裂抑制効果に相関があることを確認した。また、2本を32mmの深さで打込んだ仕様と4本を16mmの深さで打込んだ仕様を比較すると、前者の場合には割裂破壊が3体中1体のみしか生じなかったのに対して、後者は全試験体で生じた。このことより、打込み位置によって割裂抑制の効果が異なることを確認した。更に、割裂想定線における繊維直交方向のひずみの分布について、測定値のばらつきが大きく、径の違いや補強仕様の違いによる傾向の定量的な把握は難しかった。しかしながら、加力方向によらず、ドリフドピンの両側で引張方向のひずみが計測され、その値に加力方向による明確な大小の傾向はないことから、加力方向だけでなく両側に補強しておく必要性の示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度に計画していた「集成材を用いた鋼板挿入ドリフトピン接合の全ねじスクリューによる割裂抑制効果の検討」についてであるが、鋼種や径が異なることによる孔まわりの応力分布の違いは解明できなかったものの、構造実験において、全ねじビスの打込み本数や打込み深さを実験変数として、試行的に仕様を変えて、割裂破壊の抑制が全ねじスクリューの引抜耐力と打込み位置に相関があることを確認することができ、また、用いるドリフトとピンが異なる場合や鋼種が異なる場合に対して割裂抑制される仕様を見い出せたため、R3年度に行う構造実験の計画が予定通り可能となったため、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、前年度に得られた割裂抑制仕様を基準として、来年度に計画しているブレース耐力壁の解析的な検討に用いるための基礎的なデータを得ることを目的として、割裂が抑制されてドリフトピンが破断される破壊モードの場合にどの程度の塑性変形能が得られるかを実験的に確認する。構造実験を前期に行い、データの分析と予備的な解析的検討を後期に行って来年度の検討が円滑に進むようにして研究成果の最大化に努める。また、日本建築学会やその他の研究会に積極的に参加して情報収集に努める。
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Causes of Carryover |
集成材を用いた鋼板挿入ドリフトピン接合の全ねじビスによる割裂抑制の検討に関わる構造実験で試験体の調達費用について、実際の契約金額が当初想定していた金額と異なったため。但し、その差額は大きくなく研究計画の変更はない。前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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