2022 Fiscal Year Research-status Report
家族以外の他者と人間関係を構築していく住まい方に関する研究
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20K14900
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 由乃 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (20825260)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シェア居住 / 運営 / 共用空間 / アクティビティ / デザイン / シェアハウス / シェアオフィス / 管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、空き家の増加、集合住宅の老朽化、社会的孤立や孤独死が社会問題として取り上げられる一方で、空き家を他人同士が集まって暮らすシェアハウスに改築するなど、「一住宅に一家族」という従来の生活スタイルとは異なる住まいの選択肢が広がりつつある。実際、近年シェアハウスの数は増加しており、特に関東圏に多くの物件が集中して存在している。さらに、特色ある共用部やアクティビティを売りとするシェアハウスも複数みられる。このような物件のコンセプトは、入居者間の交流に寄与するものであり、住まいという空間の中で、家族ではない他者との関係性の構築の一助となると考えられる。そこで本年度は、以下の観点から調査を行った。 1.シェアハウス物件が集中して存在する東京都世田谷区及び神奈川県横浜市のシェアハウスの物件対象に、ウェブ上に公開された物件の紹介文からシェアハウスごとのコンセプトを整理・分析し、コンセプトの表れ方を空間、及び運営の観点から整理した。 その結果、シェアハウスのコンセプトは入居者を限定する明確なものから、物件に合う入居者像を示す比較的ゆるやかなもの、入居者の属性や嗜好には言及しないがデザインに特徴を持たせたものまで、幅広いパターンが見られた。また、物件の空間デザインコンセプトの中には、まちのイメージを意識したものもあったことや、管理会社によって管理する物件の立地が異なることから、様々な地域の物件についても調査を行うことで、新たな特徴や地域差が明らかになる可能性が示唆された。 2.関東圏に存在する、シェアオフィスと一体型となったシェアハウス4件に対して、運営者へのヒアリング調査及び現地調査を行い、共用空間の管理運営方法について空間の開き方、利用者への働きかけ及びCOVID-19の影響に着目して分析を行った。この調査内容については、現在論文として発表するため結果を整理している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.については、量的分析を行うために研究対象とするシェアハウス規模を当初より広く設定するという変更を行ったため、追加のデータ収集を行った。本年度中にデータ収集及び分析については概ね終了し、その一部成果については学会発表を行ったが、結果全体については現在とりまとめを行っている段階である。 2.についてはCOVID-19の流行により前年度までに行うことが出来なかった現地調査を実施することが出来、現在その調査結果を論文としてまとめているが、査読を経て出版するところまでには至っていない。 研究当初の予定では、本年度中に全ての研究成果の論文発表までを終える予定であったが、研究開始時のCOVID-19の流行に伴う現地調査の制限や国際会議の中止などによる調査の遅れ・研究成果発表機会の消失が本年度まで持ち越されたため、全体として進捗はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していたシェアハウス物件の量的データ分析及び特徴的事例に対する関係者へのヒアリング調査、現地調査等の質的調査については概ね終了している。COVID-19の流行による海外渡航制限も解除の方向であり、来年度中は本年度までの研究成果をもとに国内査読論文執筆及び国際会議での口頭発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行により対面での国際会議参加の機会や現地調査等による他地域への出張の機会が消失したことにより、旅費として計上した予算が次年度使用となった。現在COVID-19による渡航制限は解除の方向にあるため、今後、国際会議・国内学会への参加や追加調査が必要な場合には現地調査等を行うことによって使用する予定である。 また、それに伴い論文成果の発表機会が減少したため、論文投稿料や英文校正費等も予定支出額に満たなかった。現在研究の主な調査は終了し、論文として成果をまとめる段階にあるため、来年度中には使用見込みである。
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