The shape of the farmland with land allotment of Jyori-grid system in the three eras of the Meiji, postwar growth period, and the present age, and enhancing the value of the landscape

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K14912
• Research Institution: The University of Shiga Prefecture
• Principal Investigator: 秦 憲志 滋賀県立大学, 地域共生センター, 研究員 (50760815)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 条里地割 / 風景 / 明治期 / 戦後成長期 / 現代 / 農地整備 / 文化的資源活用

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、時代を遡って集落の空間的特質を客観的に把握できる明治期以降を対象として、条里地割の形態が良好に維持されている地域を抽出し、明治期、戦後高度成長期、現代の三つの時代を切り口として、条里地割の原型的な姿と今日に至る存在形態を明らかにすることを目的とする。また、地域比較を行い、地域性や歴史・社会的背景を踏まえ、条里地割が継承されている要因や条件を明らかにするとともに、保全していくために必要な技術や制度的課題、有効な手法を提示することを目的とする。これらの目的を達成するため、以下の取組を行った。
１．条里地割を踏襲する集落の明治期における農地の空間構成の特質を明らかにするため、滋賀県栗東市「出庭（宅屋）」と「北中小路」、福井県越前市「稲寄」と「瓜生」の４つの集落を対象として、土地台帳データと地籍図の情報を整理・分析し、農地の等級構成による空間的特徴と所有農地の規模と空間分布との関係を再検討し、論文原稿の修正を行った。
２．前年度に引き続き、滋賀県愛知郡愛荘町「長野」の調査を行い、昭和50年代前半の農地の所有状況について資料収集を行った。また井堰・水路の調査を行い、水利状況と水利施設、遺構を把握した。
３．新たな対象地域として、鳥取県天神川下流域羽合（はわい）平野（湯梨浜町と一部、倉吉市）の現地調査と資料調査を行い、明治期の地籍図を作成するとともに、戦後すぐに行われた土地改良事業の実施内容を明らかにした。現在、条里地割の継承や農地整備における農家の関わり方について分析を進めている。
４．また、文化財保護と農業基盤整備や地域づくりのあり方を探るため、島根県出雲国府跡を中心とする意宇（おう）平野（松江市）の予備調査を行った。立地集落の概要についても地元関係者にヒアリング調査を行った。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

条里地割を踏襲する集落の地域比較を行うため、新たな対象地を4集落程度選定し、地域調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査が思うようには進んでいない。滋賀県内の1集落（愛荘町「長野」）については、補足調査や現地調査を行い、分析資料の追加収集、整理を進めることができた。
一方、県外で予定していた比較対象集落の調査については、明治期、戦後成長期、現代の三つの時代におけるデータをこれまで調査を行っている集落と同様に整備することは過大な労力と時間がかかるため、対象地域と調査内容の見直しを行っている。
研究課題の核となる部分において新たな知見を得るためには、集落レベルでの比較が必ずしも必要でない場合があり、集落より広い地域を対象とする実態調査やより多くの地域の事例を収集する方向で研究を進めている。本年度は事前の情報収集に時間をかけ、鳥取県と島根県において新たな地域研究に着手している。

Strategy for Future Research Activity

〇現代に至る条里地割の存在形態のパターン探求―明治期、戦後成長期、現代の三つの時代を通して、条里地割を踏襲する農地の形態がどのように存続・継承、変化・発展、改変しているか、地域の発展過程や社会との関係から分析を進め、存在形態の類型化とその要因・条件を導き出す。そのために、新たな地域研究に着手した鳥取県と島根県において継続して調査を行う。他にも参考となる地域の情報収集を行い、必要な事例の地域調査を行う。
〇調査実施済み集落のフォローアップ調査―滋賀県と福井県における調査実施済み集落について、営農や土地利用動向、地域社会の状況など今日的課題を把握し、条里地割の景観を継承しながらよりよい地域空間を創造していく方策を探る。
〇文化的資源の活用方策の検討と条里地割の価値の顕在化―文化的景観や農業遺産に関する先行事例の調査、農村地域における特色ある地域の空間管理に関する事例調査、実践者や研究者へのヒアリング調査を行う。また条里地割の価値をより多くの人と共有し、将来に引き継いでいくために、農地整備と人々の関わりを示す記録写真とGIS等の活用について検討するとともに、地域をつなぐネットワークづくりを進める。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症のため現地調査や県外調査が滞ってしまったこと等による旅費の未使用や関連して資料整理・データ作成補助賃金の縮小、論文投稿料の未使用等の要因による。
令和4年度は、現地調査や県外調査、ヒアリング調査をより積極的に行う予定である。また論文の執筆・投稿を進める。さらに、記録写真などを活用して条里地割の価値を顕在化するツールづくりを検討し、提案していく。