2021 Fiscal Year Research-status Report
地方圏における戸建て住宅活用型シェアハウスの住宅セーフティネットへの導入可能性
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20K14920
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 知子 (大庭知子) 九州産業大学, 建築都市工学部, 准教授 (90823823)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 住宅セーフティネット / 居住支援協議会 / 住宅確保要配慮者 / 空き家 / 地方圏 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
R3年度は、予定通り、住宅セーフティネットに登録されている物件の特徴分析に取り組んだ。中国地方5県、九州地方8県のデータベース化及び特徴分析を行った結果、以下の知見を得た。1)総登録物件数60,248棟(444,860戸)が登録され、地方に比べ関東地方が15万件と多い。また、登録物件数は経過観察中も変動し増加傾向であった(2021年6月9日時点)。全国的に低層集合住宅が占める割合が82.2%と高く、戸建てや共同居住型住宅であるグループホームなどの登録は0.2%と少ない。2)登録物件について、中国地方・九州地方どちらの地方でも木造低層集合住宅が多い。中国地方では築年数が20年以下の物件が多く、部屋面積は40㎡前後と50㎡以上が多いことから、単身者や夫婦向けと家族向けの物件が幅広く登録されている。九州地方では築年数が10年程度の物件が多く、部屋面積が50㎡以上の物件が多いことから家族向けの物件が多く登録されていることがわかる。3)戸建て物件の登録が極端に少なく、中国地方3戸及び九州地方2戸の計5戸のみである。 以上、低層集合住宅の登録が多くを占め、戸建て物件の少なさが顕著である。地方圏の戸建て空き家の活用促進の観点からは登録の促進が課題として指摘される。背景には、制度自体の認知度の低さや手続きが複雑な点、多くの空き家の耐震性が住宅セーフティネットの基準を満たさないこと等があるものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R3年度は西日本エリアの登録物件のデータベース作成を予定していたが、登録物件数の変動が大きく、中国及び九州地方にとどまった。また、居住支援協議会の事務局である自治体へのヒアリングや住宅確保用配慮者向けシェアハウスの事例調査も実施する予定であったが、コロナ禍で出張が困難であったため、かなわなかった。 そのため、研究の進捗はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
R2~R3年度にかけて、研究スケジュールの【A】制度運営体制の実態調査、【B】地方圏シェアハウスの整備・運営形態調査・分析、【C】地方圏住宅確保要配慮者向けシェアハウスの事例調査・分析に関しては全て着手しており、各調査・分析が、割程度終了している。 今後の方針として以下の3つを設定している。第1に、調査Aの全国の登録物件のデータベース化及び特徴分析を完了させる予定である。データベース化の作業要領を得たため、今後は作業時間を短縮可能と考えている。第2に、調査A,B、Cに関連する内容として、R3年度の調査より戸建て物件の登録が極端に少ないことが明らかになったことから、戸建て物件に関しては、住宅セーフティネット制度に登録された経緯や、登録物件の傾向及び課題を、居住支援協議会及び関係自治体、物件所有者等へのアンケート及びヒアリング調査・分析により明らかにする。第3に、調査B,Cに関する内容で、シェアハウス(共同居住型住宅)として登録される物件は、R2年度での調査時点では69事例であったが、現在110件にまで増加しており、その詳細についても再度把握する必要がある。特に、戸建て物件を活用したシェアハウスに関しては、積極的に事例調査を実施し、事例分析結果の蓄積に努める。 以上3点の分析から得られた知見を総括し、地方圏における戸建て空き家を活用したシェアハウスの住宅セーフティネット制度への導入可能性について考察及び検討を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張が不可能な状況となり、事例調査や自治体へのヒアリングが実行できなかったため、旅費の使用額が少なかった。 翌年度以降は、ワクチン接種が進み出張にも行きやすい状況になってきたように見受けられるので、事例調査に積極的に取り組んでいく予定である。その場合、旅費及び調査協力者の人件費などが発生する。
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