2020 Fiscal Year Research-status Report
前近代オスマン朝の住宅史の再構築:接客空間の形成を中心に
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20K14936
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
川本 智史 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (10748669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住居 / オスマン朝 / エヴリヤ・チェレビー |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍により、海外調査の実施が不可能であった当該年度はまず既往研究の分析と整理につとめた。とくにトルコの民家研究における古典的研究であるエルデムの『トルコの家全3巻』に掲載されている民家のリスト化を進めた。また20世紀後半のトルコ建築史研究を代表するクバンの一連の著作の分析も進めた。既往研究においてはトルコ民族主義的な見方が濃厚であり、遊牧民の天幕が固定式の住居へと発展したとする事実に基づかない主張がなされることが多いことがここでは判明した。住民の社会構造や時期によって住宅形態は大きく異なることから、イデオロギーにとらわれない、客観的な分析が必要であることがここでは明らかとなった。 これに加えて、文献資料の分析をおこなった。まず対象としたのが1455年のイスタンブル家屋調査台帳で、近年得られた資料に関する知見を合わせて、15世紀半ばの住宅建築についての考察を行った。その結果これがのちにアヤソフィアワクフのワクフ財となること、またアヤソフィアワクフのワクフ台帳に同じ物件が登場することが判明した。当該台帳に登場する住宅の大半は、ビザンツ時代に建てられた住居が再利用されたものであるから、このような建物がオスマン期になってどう受容されたのか、あるいはされなかったのかについては今後の検討課題である。 また17世紀オスマン朝の旅行記作者エヴリヤ・チェレビーの記述を分析する過程で、随所に地方の家屋に関する断片的な記述が現れることを発見した。これについては次年度以降さらなる横断的な分析と比較を行うことで、17世紀当時における住宅建築の考察に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界的なコロナウイルス感染拡大とこれに伴う海外渡航制限のため、予定していたトルコ国内での現地調査と資料調査を行うことができなかった。また日本国内でも出張等の移動が制限されていたため、当初予定していた研究や研究交流に大きな支障があった。そこで研究手法を文献調査に切り替えるとともに、図面類の整理などを行って研究の進捗に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降も海外渡航制限の状況が続くことが予測されるため、今後の研究予定は大幅な変更を余儀なくされている。とくに比較研究の観点からイランやエジプトなど近隣諸国での現地調査を予定していたが、これらについては文献調査への切り替えの必要があると考えている。トルコでの現地調査については2022年度に実施が可能であれば実行する予定である。 以上の結果、現地調査を主体とする研究の方向性は大きく転換し、既往研究と文献資料の分析を中心に、前近代オスマン朝の住宅建築の分析を行う。既往研究によって主だった住宅は調査されていることが2020年度の分析によって判明したため、まずその分類作業を進める。またこれを裏付けるものとして16-19世紀の旅行記や見聞録資料に現れる住宅建築の例を収集し、その空間の復元に努める予定である。
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Research Products
(1 results)