2022 Fiscal Year Research-status Report
ゴシック建築におけるトレーサリーを用いたトリフォリウムの基礎的研究
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20K14937
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋崎 礼 九州大学, 芸術工学研究院, 特別研究員(RPD) (80866880)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴシック / 中世建築 / スケール / マイクロ・アーキテクチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの文献渉猟を通し、フランスのエヴルー大聖堂やトロワ大聖堂のトリフォリウムが今後の調査対象候補として浮上した。2022年度にはそれらの建築に関するさらなる文献調査を進めた結果、特にエヴルー大聖堂に関する既往研究が少ないことが判明したため、エヴルー大聖堂が位置するウール県の担当当局(UDAP)に調査の申請を行い、10月に現地調査を行った。エヴルー大聖堂の内陣トリフォリウムにおいてはフランボワイヤン様式のトレーサリーに興味深い石積みが観察され、数種類の金属材も確認された。同じ機会に、フランスの美術史研究所図書館や建築・文化遺産メディアテークに所蔵されている文献や図面史料等を調査し、今後の調査の手がかりを得ることができた。 また、同じく10月にフランス・ノワイヨン大聖堂に関するシンポジウムを聴講するとともに、ジュール・ヴェルヌ大学(フランス・アミアン)の教授および博士課程学生とゴシック建築に関する研究討論を行った。 9月には国内学会において古典主義に関するパネルディスカッションに登壇し、中世における古典主義の問題の検討を通して、ゴシック様式を建築史全体の流れの中に位置づけなおすことを試みた。また建築模型に関するパネルディスカッションを主催し、中世を含む建築の各領域においてスケールを超越した建築のあり方をマイクロ・アーキテクチャーというキーワードとともに論じ、建築の各領域の越境と対話を試みた。 さらに、2019年に火災の被害を受けたパリのノートル=ダム大聖堂の再建をめぐる論点について、フランスでの視察及び文献の調査を踏まえて国内シンポジウムでの発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までと異なり、新型コロナウイルスの影響が少なくなったこともあり、海外での調査や研究者との対面討論を実現することができた。また、複数のパネルディスカッションにおける討論を通して幅広い文脈でゴシック様式をとらえ直し、研究成果の解釈やまとめに関する手がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他の建築に関する実地調査をさらに進めていくと同時に、スケールや様式、マイクロ・アーキテクチャー等、他の建築様式との比較を可能にするキーワードについてさらに掘り下げることによってゴシック様式の再解釈を行いたい。
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Causes of Carryover |
2020年・2021年度において、新型コロナウイルスにより研究活動に支障を生じていたため、相対的に進捗が遅れており、未使用額が生じている。2022年度に引き続き2023年度にも実地調査等を精力的に行い、予算の運用をしていく方針である。
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