2023 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア北部のアドリア海沿岸及びその周辺における地域形成史に関する研究
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20K14940
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
樋渡 彩 近畿大学, 工学部, 講師 (90793696)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラグーナ / エトルリア人 / ローマ時代 / 農業 / ブドウ畑 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度、渡航許可が出たため、イタリアに渡航することができた。 i) アドリア海沿岸の対象地全体の考察については、新たに、アドリア海に注ぐポー川に位置するフェッラーラ一帯の情報収集することができた。フェッラーラは、古代ローマ時代に始まる。ルネサンスの都市改造は有名だが、それ以前の情報として、7世紀初期に遡る地区を把握した。また、中世に形成したエリアとポー川の位置関係を考察し、水に囲まれていた都市であったことが確認できた。フェッラーラとアドリア海の間のポー川の下流域については、エトルリア人が住んでいたことが発掘調査から明らかにされていた。この辺りの湿地帯に位置するコマッキオよりもずっと古くから周辺に水路を張り巡らした水上の集落が出来ていたという。グラードからラヴェンナまでの間で、ポー川河口辺りは何もないと推測していたが、新たな一面を捉えることができた。 ii) 個々の都市およびその周辺の考察については、農業を生業とするサンテラズモについての考察を進めた。その成果の一部を「サンテラズモにおける空間構造に関する歴史的考察」『日本建築学会大会学術講演梗概集』にまとめた。ここでは、ラグーナの防衛線として役割を担っていた時期もあったが、農業という長い歴史をもつ島であると位置づけた。13 世紀にはすでにブドウ畑が存在し、16 世紀には島全体がブドウ畑として利用されていた。16 世紀の短冊形の敷地割りという空間構造を、現在もなお維持し、農地として土地利用も継承されていることがわかった。ラグーナ全体としては、リド、ムラーノ、トルチェッロ、マッツォルボなどの島の形成過程を追いながら、周辺との関係を捉え、ラグーナ全体の空間形成の変遷を明らかにした。 今後も各島の形成過程を追いながら、周辺との関係を捉え、ラグーナ全体の空間形成の変遷を考察する必要がある。
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