2020 Fiscal Year Research-status Report
越後大工・小黒杢右衛門一族の作風―近世在方大工の作家論的研究
Project/Area Number |
20K14944
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
目黒 新悟 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (20829337)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 工匠 / 棟梁 / 大工 / 建築活動 / 大庄屋 / 仏堂 / 指図 / 空間構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現地調査や資料調査にもとづき、越後大工・小黒杢右衛門一族の建築作品の特徴と変遷・系譜を明らかにすることを目的とする。小黒杢右衛門一族は、初代から七代が「杢右衛門」を襲名し、近世越後の主要な建造物を造営した越後大工として知られる。建築作品の一例として、五代小黒杢右衛門重命による、重要文化財旧笹川家住宅がある。本研究の期間は4か年を予定しており、2020年度はその1年目に該当する。 2020年度の上半期は、新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮しながら、研究環境の整備や、関連する先行研究などの収集・整理に努めたほか、可能な範囲で調査を進めた。小黒杢右衛門一族の建築作品に関する資料調査と、数例の建築作品の現地調査をおこなった。これらの調査により、関連する資料を収集したほか、建築作品の特徴的な点を把握した。具体的には、軒まわりの構法として船枻(せがい)造に類する構法を用いることや、空間構成の特徴などで、今後の研究を進める上での仮説を得た。 2020年度の下半期は、これまでに収集した古文書・古記録・指図等の資料の翻刻・釈読をおこない、小黒杢右衛門一族の建築活動や建築作品に関する記録を抽出し、これにもとづき検討をおこなった。これにより、小黒杢右衛門一族の建築活動および建築作品の特徴の一端を把握した。 研究成果の一部は、新潟県の地元のNPO法人が企画した講演会にて、一般市民に向けて講演したほか、同法人が編集・発行した資料にて論考を著した。これらのほか、小黒杢右衛門が手がけた上層民家に関する研究成果について、2021年度日本建築学会北陸支部大会にて、発表の予定がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、自宅待機(在宅勤務)を余儀なくされ、出張や物品購入等にも制限が出た。本研究は現地調査を主体としており、これにより当初計画通りに研究課題を遂行することができなかったため。しかしながら、そういった環境下で最終的な目的を達成できるよう、研究の計画や方法を試行錯誤しながら研究を進め、一定の成果を挙げた。 これに加え、当初計画で3か月間、通常業務として平城宮跡の発掘調査に従事する予定があったが、これが3か月超過したことにより、2020年10月から2021年3月までの半年間、平日の日中は本研究課題を進めることができなかったため。しかしながら、それ以外の時間を割いて研究を進め、一定の成果を挙げた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の2年目となる2021年度は、まず前年度からの資料調査とその検討を継続しておこなう。小黒杢右衛門一族の建築活動(地理的範囲、時代的範囲、建築類型など)を集成・リスト化し、その全体像を明らかにする。その知見にもとづき調査の準備・計画を立て、現地での1次調査(悉皆調査)をおこなう。1次調査では、建築作品の所在地を現在の住所と同定し、存否を確認する。現存する建築作品については規模・構造形式等を記録し、写真撮影をおこなう。1次調査の中で、建築作品の主立った建築的特徴を捉え、後におこなう2次調査(個別調査)の指針を立てることを目標とする。なお、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みながら、必ずしもこれに拘泥せず、柔軟に進めることを基本とする。 研究成果は、学界のみならず調査協力者や地域住民などにも報告するよう努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、自宅待機(在宅勤務)を余儀なくされ、出張や物品購入等にも制限が出たこと、通常業務が当初計画より大幅に超過したことなどが一因として挙げられる。しかしながら、次年度使用額は配分額の1.7%ほどで、概ねは執行できたものと考える。 生じた次年度使用額は、2020年度に執行できなかった物品費などに充当する計画である。
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Research Products
(1 results)