2021 Fiscal Year Research-status Report
Demonstration of Graphite Nozzle Erosion Suppression in Hybrid Rockets Through Regenerative Cooling
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20K14946
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
KAMPS LANDON 北海道大学, 工学研究院, 特任助教 (70869502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ノズル浸食 / 再生冷却 / ハイブリッドロケット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、黒鉛ノズルの冷却による浸食抑制効果の解明および黒鉛ノズル浸食抑制を実現する再生冷却式ハイブリッドロケットの実証である。再生冷却黒鉛ノズルを実証するために明らかにするべき学術的「問い」は以下の3点である。(1)冷却によるノズル浸食の抑制は可能か、(2)液体酸化剤による十分な冷却は可能か、(3)再生冷却黒鉛ノズルシステムの設計解は存在するのか、である。研究実施計画は、これら3つの学術的「問い」に応じて段階的に設定した。第1段階として、冷却による黒鉛ノズル浸食抑制効果を定量的に検討するため、入手が容易な水を冷却材として燃焼実験を行い、ノズル内部の温度データを蓄積した。燃焼時間および水の流量を実験パラメータとして設定し、10回以上の地上燃焼実験を実施した。そのほかの実験条件については、過去の無冷却でのノズル浸食実験の条件に合わせて行い、冷却の有無によるノズル浸食への影響について比較を行った。燃焼実験の結果から、適切な流量で冷却することでノズル浸食を抑制可能であることが確認された。これらの結果により、本研究における明らかにすべき問い(1)が実証できた。これに加え、ロケットにおけるノズル浸食に関する数値計算を専門的に研究しているローマ大学の研究者らと共に、ノズル浸食と温度の関係についてジャーナル論文を投稿した。第2段階として、ノズル冷却材に液体酸素(LOX)を用いる5回の実験を行い、ノズルの内部の温度データを取得した。2021年度の前半には、これら実験結果をもとに理論モデルを更新し、再生冷却用のノズルの設計を行った。2021年度後半には、金属の3Dプリントと従来の溶接を組み合わせて、再生冷却経路を含むノズルを製作した。そして、新設計の流量能力を実験的に確認するために、LOX流量試験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で蓄積した実験装置および研究ノウハウを活かすことで、初年度は研究実施計画よりも少し早く遂行することができた。初年度、研究が計画よりも早く進んだ理由は大きく2つある。1つ目に、採用までの期間における入念な準備である。採用までの期間では、既存の実験装置の改良および実験装置の動作確認のための試運転を行い、第1段階の研究を推進するためのノウハウの蓄積、および実験手順の確立を行った。2つ目に、採用した黒鉛材料の性能が予想以上に良かった点である。一方、2021年度は研究実施計画よりも研究の進捗状況が少し遅れた。主な理由は、冷却材としてLOXを用いた初期の実験結果をもとに解析を進めたところ、実験装置、特にLOX供給システムの改善が必要だと判明したためである。再生冷却を可能にするためには、モーターへ供給するLOXの量も考慮すると、より多くのLOXが必要となることが判明し、高度な流量システム構築が必要であることが明らかになった。これは、より詳細な二相流の計算を研究し、ノズルの設計アルゴリズムに組み込む必要があること、新しい実験装置が必要であること、新しいノズルの製造方法について高度な検討が必要であることを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験方法の変更により、本研究の主目的を達成するために必要な実験装置の構築および準備が完了した。2022年度前半は、液体酸素(LOX)を冷却材として用いた一連の実験を行い、LOXの冷却能力を評価し、公開文献として報告する予定である。さらに、LOXを用いた初の再生冷却実験も実施する。現在、AIAA Aviation Forum 2022での発表を予定しており、AIAA SciTech 2023での成果発表も計画している。本研究の主目的であるハイブリッドロケット用再生冷却黒鉛ノズルの初の実証は、本年度第3四半期に達成することを目指す。本実験の条件は、第1四半期、第2四半期の実験を踏まえて決定する予定である。本年度の最終四半期には、LOXに代わる酸化剤を検討する。当初は亜酸化窒素を使う予定だったが、近年の状況から60wt%の過酸化水素の利用も検討している。昨年度、当研究室では、60wt%過酸化水素を用いたハイブリッドロケットの燃焼と保炎に、世界で初めて成功し、特許出願を行った。60wt%の過酸化水素は、常温で液体として保存でき、LOXと同等の安全性があり、高圧ガスでないため、酸化剤として魅力的である。60wt%の過酸化水素を再生冷却方式で使うことができれば、革新的な推進系を生み出すことができる。
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Causes of Carryover |
納期が遅れており、年度内に受領できなかった。
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