2022 Fiscal Year Research-status Report
深宇宙探査に有用な周期軌道に生起する高次元・多体モデルに特有の不安定ダイナミクス
Project/Area Number |
20K14951
|
Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 健太 広島工業大学, 工学部, 講師 (20868335)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 正則化 / 軌道最適化 / 非線形計画法 / 周期軌道 / 円制限三体問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
天体の重力ポテンシャルの特異点を除去するために従来用いられてきた正則化の手法を,非線形計画法の枠組みに組み込むことで,宇宙探査機の新しい軌道最適化の手法を構築した.二次元(平面)問題ではLevi-Civita変換,三次元(空間)問題に対してはKustaanheimo-Stiefel変換に基づいて正則化変数ベクトルを導入し,瞬間的な速度変更を表すΔVベクトルを変換した. 本手法では,ΔVベクトルの大きさの総和として定義される目的関数の勾配から特異点を除去したため,最適解において不要なΔVは精度良くゼロ近傍に抑えられ,また予想解に与えられておらずとも最適解に必要なΔVは自動的に生成されるという利点がある. 本手法の実装においては,数値計算ソフトウェアMATLABの非線形計画法ソルバーfminconを用いた.特に,目的関数および拘束条件の,変数に関する一次導関数を解析的に与えることで,計算を高速化かつロバスト化した. 応用として,月近傍の周期軌道間の遷移軌道の最適化を行い,従来よりも燃料消費量が大幅に少ない解を得ることができた.また,高次元の相空間をもつ空間円制限三体問題において,不安定平衡点まわりで軌道面外成分が大きく変化する軌道を求めるにあたり本手法を適用することで,2020年度に本研究課題で実施した結果と比較して,不要なΔVをより精度良く除去することができた.さらには,低推力推進を想定した定式化も行い,軌道面外方向の不安定性を利用して2020年度に求めていたインパルス推進を想定した遷移軌道を,低推力推進を想定した遷移軌道に変換できることも示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的な課題である,高次元・多体モデルに特有の周期軌道に生起する不安定性を利用した遷移軌道の設計を,より精度良く行うことを可能とする最適化手法を構築できたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度に構築した軌道最適化手法を実行する際,目的関数および拘束条件の,変数に関する一次導関数のみならず,二次導関数まで解析的に導出し,非線形計画法のソルバーに与えることで,より効率的かつロバストな計算を可能とするよう改変する.
|
Causes of Carryover |
感染症拡大の影響により,2022年夏に参加を予定していた国際会議への参加を見送ったことで,次年度使用額が生じた.2023年度は,より活発に研究発表を行うことで,翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である.
|
Research Products
(7 results)