2020 Fiscal Year Research-status Report
Gravity Field and Orbital Mechanics within the Brillouin Sphere of a Small Body
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20K14952
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
菊地 翔太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (90830068)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小天体 / 重力場 / 内部構造 / 探査機 / 軌道運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
小天体表面近くのブリルアン球(天体の外接球の一種)内では、歪な形状に起因する重力の不均一成分の影響で、物体の運動は複雑な様相を示す。本研究では、はやぶさ2で観測された小惑星リュウグウ近傍でのフライトデータを用いて、小天体のブリルアン球内における重力場と軌道運動を実証的に解明する。2020年度の研究では、まず小惑星リュウグウの多面体形状モデルを用いて、一定密度を仮定した体積分を行うことで、リュウグウの表面上および表面近傍での重力の空間分布を求めた。この結果、リュウグウ表面での重力摂動の効果が、球形の重力と比べて最大25%以上生じることを明らかにした。また、構築した重力モデルに基づき、はやぶさ2が着陸制御用に投下したターゲットマーカーの低高度軌道の推定を行った。軌道推定には、電波・画像・測距といった複数のフライトデータを用いており、マーカーの精密な軌道復元に成功した。また、この軌道復元では、重力場摂動の影響を受けるマーカーの衝突・反発軌道も推定しており、マーカーが95%以上のエネルギー散逸率を達成したことを示した。このことは、マーカーの低反発機構が、微小重力下でも正しく機能したことの証左である。さらに、この軌道復元においては、重力場も推定変数として扱っており、はやぶさ2の着陸点付近の密度がリュウグウ全球の平均密度に近いことを明らかにした。この解析結果は、はやぶさ2の着陸点付近で天体内部構造の偏りが小さいことを示唆しており、内部構造に対して一定の制約を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度に計画していた「研究1(a):形状モデルに基づく重力モデル構築」、「研究1(b):軌道データに基づく重力モデル構築」を実施し、また2021年度前半に計画していた「研究1(c):1(a)と1(b)で構築した重力モデルの比較」についても、前倒しで研究を進め、着陸用ターゲットマーカーの軌道を用いた解析を完了した。1(a)と1(b)で構築した重力モデルが良い一致を示していることから、小惑星リュウグウの内部構造の局所的な偏りが小さいことが示唆され、1(c)で目指していた内部構造に関して一定の制約を与えることができた。このことから、当初の計画以上に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は当初の予定通り、2020年度に構築した重力モデルに基づき、小惑星探査機はやぶさ2の実フライトデータ(電波・画像・測距)を用いて、探査機の軌道復元を行う予定である。ブリルアン球内の重力場摂動の影響が強い領域における、探査機の観測軌道や着陸軌道の振る舞いを解析し、実ミッションにおける軌道制御実績等を評価する。2020年度に既に前倒しで、探査機軌道のデータ解析には着手しているため、2021年度中に探査機軌道の解析を完遂するとともに、国際誌での論文受理を目指す。さらに、この成果を応用して、最終年度の2022年度には、リュウグウ表面から放出されたダストの、重力場摂動を受ける軌道運動を推定する。
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Causes of Carryover |
物品購入時の端数により次年度使用額が生じた。次年度は、当初の予定通り、演算装置の購入、学術論文の投稿費、国際学会参加費等に、本年度の残額と合わせて助成金を使用する予定である。
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[Journal Article] Ballistic Deployment of the Hayabusa2 Artificial Landmarks in the Microgravity Environment of Ryugu2021
Author(s)
S. Kikuchi, N. Ogawa, O. Mori, T. Saiki, Y. Takei, F. Terui, G. Ono, Y. Mimasu, K. Yoshikawa, S. Van Wal, H. Takeuchi, H. Ikeda, A. Fujii, Y. Takao, T. Kusumoto, N. Hirata, N. Hirata, K. Shirai, T. Kouyama, S. Kameda, M. Yamada, S. Nakazawa, M. Yoshikawa, S. Tanaka, S. Sugita, S. Watanabe, and Y. Tsuda
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Journal Title
Icarus
Volume: 358
Pages: 114220
DOI
Peer Reviewed / Open Access