2020 Fiscal Year Research-status Report
多様な自律船が存在する環境下でのロバストな自動避航アルゴリズムの研究
Project/Area Number |
20K14968
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
佐藤 圭二 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (90734244)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 避航操船 / ロバスト性 / CORLEGs / OZT |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下に示す研究項目(1)、(2)のサブテーマを設け、研究を進めた。 【研究項目(1)単一のアルゴリズムで複数のパラメータで設定した環境下での評価】避航アルゴリズムのパラメーターをそれぞれの船舶に設定可能なシミュレーション環境を整備した。避航アルゴリズムとしては、自船前方に経路ネットワークを構築し、その中で安全な避航経路を探索する避航アルゴリズムを構築した。経路ネットワーク上に、相手船と衝突する危険がある領域(OZT: Obstacle Zone by Target)を配置し、経路ネットワークの中でOZTと重なる領域を通行不可とし、次に向かうべき点(WP: Way Point)へと向かう経路を探索するものである。避航アルゴリズムのパラメータは、ネットワークの形状や、経路探索に使用するネットワークのエッジに対する重み付けを変えることができるため、これらパラメータ設定を変更することで、避航アルゴリズムの挙動を変更することが可能となった。 【研究項目(2)複数のアルゴリズムが存在する環境下での評価】シミュレーション実行のためのシナリオファイルに、避航アルゴリズムの種類と、その避航アルゴリズムのパラメータを記述することで、複数の避航アルゴリズムが存在するシミュレーション環境を整備した。また、アルゴリズムの評価のためにシナリオ実行後に、各相手船との衝突リスクの計算を行い、また、海上衝突予防法(CORLEGs)に準拠していたかどうかのスコアを出力するプログラムを作成し、避航できたかどうかと共に、避航義務船、保持船としての役割を守っているかどうかも検証可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究項目(1)単一のアルゴリズムで複数のパラメータで設定した環境下での評価】OZTと経路ネットワークを用いた避航アルゴリズムを作成し、それぞれの船舶に避航アルゴリズムのパラメータを設定することで、様々な避航動作をする船舶が存在するシミュレーション環境を構築した。また、1対1の簡易的なシナリオから、複数の相手船がいるシナリオ、さらに、AISデータを用いて実海域の輻輳海域のシナリオも整備した。 【研究項目(2)複数のアルゴリズムが存在する環境下での評価】 複数のアルゴリズムがシミュレータで実行可能なように、シミュレータの避航操船アルゴリズムの入出力部分を規格化し、インターフェースとして抽出した。インターフェースに合わせてアルゴリズムを作成することで、シミュレーション実行のためのシナリオファイルの各船の設定項目に避航アルゴリズムの種類を記述するだけで、アルゴリズムを切り替えることができる。このことにより、複数の避航アルゴリズムが存在するシミュレーション環境を実現した。また、避航アルゴリズムの評価のために、実行結果としてそれぞれの船舶の軌跡を出力するとともに、多数の衝突リスク(最接近距離、CJ:Collision Judgement、SJ:Subjective Judgement)を計算して評価可能な環境を整えた。さらに、それぞれの見合い関係で海上衝突予防法に準拠できていたかどうかのスコアを出力するプログラムを作成し、避航できたかどうかと共に、避航義務船、保持船としての役割を守っているかどうかも検証可能となった。 以上の研究実施内容から、概ね研究は計画の通りの進捗と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
どのようなシナリオでも安定して動作するロバストな解を見つけるために、進化的多目的最適化を応用した、避航アルゴリズムのパラメータ構築を行い、簡易的なシナリオから、AIS情報を元に作成した輻輳海域のシナリオでのシミュレーションにより検証を行う。ロバストな解とは、シミュレーションを複数のシナリオで実行し、避航のパフォーマンスが安定している避航パラメータのことである。複数のシナリオの中には、相手船との見合い関係は同じだが、相手船の避航アルゴリズムが異なるというケースも含まれる。 進化的多目的最適化の主な手法としては多目的遺伝的アルゴリズムがあげられるが、これは多数の最適解を一括獲得する手法で、多数の解をトレードオフの中で獲得できる手法である。本研究では評価値のばらつきを考慮できる手法をベースに用いるが、従来手法はあくまでもナップザック問題などのトイプロブレムに適用したものであり、本研究には直接適用できない。そこで、シナリオ毎の評価値のばらつきを考慮した避航アルゴリズム用の目的関数・評価値の設計を行う。評価値としてのリスクの表現を最接近距離だけでなく、目的関数を増加、もしくは統合させるなどして海上衝突予防法も考慮できるように、適切な避航アルゴリズムのパラメータを得られるように設計する。 また、船舶特有の問題として、時間のブレはある程度許容できるが、リスクについてはあまり許容できないなどの要求があげられるため、評価値のばらつきを目的関数毎に考慮可能なパラメータ設計手法を確立することで、より現実的なパラメータを求めることが可能な評価値の表現方法についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
主に、コロナの影響により旅費の支出がなかったため差額が生じた。提案手法について実務者へのヒアリングを可能な範囲で行うとともに、国際学会が開催されない場合、論文誌への投稿などへの切り替えを計画している。
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Research Products
(2 results)