2023 Fiscal Year Research-status Report
災害時に渋滞位置を即時予測する手法の開発:災害に強い道路ネットワーク構築へ
Project/Area Number |
20K15004
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
楳本 大悟 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (80812883)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交通流 / 災害 / 社会シミュレーション / 計算社会科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に環境構築した人流シミュレーションフレームワークを用いて、シミュレーションをさらに現実寄りに拡張し、短時間でシミュレーションを実施し、政策提案が可能となるような網羅的シミュレーションの実施に着手した。シミュレーションに用いた領域は前年度と比して倍加しているうえ、より大規模な災害が生じたケースとして、区内全域に出勤してきている10万人程度の人が一斉に避難(徒歩帰宅)を実施するシナリオを実行できる環境を年度前半にまず整え、計算量を検討しながら、マルチパラメータ空間における最適戦略探索タスクの実行可能性を探った。また、どの箇所がボトルネックとして振る舞うか推定する手法を確立した。これらの結果は交通流数理研究会にて口頭発表するとともに、査読付き論文として投稿・出版した。並行して、前年度に実施したシミュレーション構築に関する論文をISAROB学会誌に投稿・出版した。また年度後半には、上記の大規模な徒歩帰宅に加え、逃げ場のない人々を一時避難施設に避難させる精緻なシナリオ構築に着手した。行政により、これらの人々はいったん公園に集めてから20個を超える一時避難施設に配分することが計画されているが、公園の出入り口として4つの候補の中から、最適な組み合わせを網羅的に全可能性の中から短時間で導出するシステムを構築した。これは動的に避難経路=ネットワークを変更しながら最適避難戦略を探る、すなわち災害時における最適な避難経路ネットワークの設計を導き出す手法を確立したことを意味する。本手法により得られた結果は施策に反映されたほか、実装例・手法提唱として国際会議AROBとして口頭発表したほか、論文としても投稿を完了した。続く年度も引き続き、出版に向けて準備を整えていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歩行者シミュレーションへのフレームワークの変更を実施したことにより、計算量がリーズナブルとなり、実際に都市規模で、短時間のうちにボトルネック箇所を推定し、これに基づいて政策提案が可能な結果を導出することが可能なシステムの構築に成功した。これは実際に行政の期待に応える結果となり、当初の研究目標の達成に該当すると考える。今後はさらに別のシナリオや道路ネットワークでのシミュレーション実装も期待されるなど、社会における有効性も示せているため、おおむね順調であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に挙げた研究成果のとりまとめ(論文報告)を引き続き進める。また、垂直避難等の多層的な新しいネットワークにおけるシミュレーションの実施が期待されているため、平面を脱した立体的なネットワークに対応可能なシミュレーションの実施、別の状況にも適用可能、すなわちさらに一般的な、最適なネットワークの設計(避難経路の設定)手法の導出を計画している。
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Causes of Carryover |
引き続き、過去に計画し支出しなかった旅費にかわる支出が少額に留まったため。大規模シミュレーションの実行により大幅に増大したデータ格納場所、およびその解析に用いる計算機のほか、昨年度から引き続き可能となった学会参加の旅費、および出版準備中の論文投稿費として使用する。
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