2021 Fiscal Year Research-status Report
噴火の痕跡はどのように失われて行くのか?:地質学的プロセスと時間スケールの解明
Project/Area Number |
20K15005
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清杉 孝司 神戸大学, 海洋底探査センター, 講師 (90768722)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 霧島火山新燃岳2011年噴火 / 降下火砕堆積物 / 地質調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,火砕堆積物の産状の経時変化を調査し,浸食や埋没,風化の進行のプロセスや時間スケールを明らかにすることである.これらを明らかにすることによって地質調査で得られたデータ(火砕堆積物の分布面積や体積,噴火の回数,給源)に関して堆積物の年代を踏まえた精度の検討が可能となる. 今年度(2021年度)4月30日から5月7日にかけて霧島火山において火砕堆積物の浸食量・埋没量・風化の調査を行った.これは昨年度に計画していたものの,新型コロナウィルスの感染拡大防止のため実施できなかった調査である.調査では噴火直後に堆積物の層厚が測定されている地点を中心に現在も確認できる堆積物の産状や層厚の記載を行った. 調査の結果を,2011年噴火の降下火砕物の分布軸(火口から南東方向)に沿った変化に着目して記述する.まず,噴火当初の堆積物が明瞭に残っているのは火口からの距離約8km以内である.これらの地点は,2011年時点で数㎝以上の層厚が確認された地点がほとんどである.これより遠方では一部に初生的な堆積物が残るが,火口から約18km以遠になると2次堆積物(おおよそ厚さ1㎝~数㎝)しか見られなくなる.これらの地点は,2011年時点に数㎜~数㎝の堆積物層厚であった地点がほとんどである.さらに火口から約22km以遠では2次堆積物などの噴火の痕跡も見られなくなる.これらの地点は,2011年時点で堆積物の層厚が数㎜であった地点がほとんどであるが,当時1.8㎝の堆積物が見られた地点でも堆積物の痕跡が無い場合が見られた. これらの結果は,浸食による火砕堆積物の消失が,堆積物の当初の層厚が浸食に耐えられるほど厚かったかどうかに規定されることを示唆している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止のため昨年度調査ができなかった影響があり,全体的な進捗は少し遅れている.今年度は感染拡大が顕著でない時期を選び,霧島火山での火砕堆積物の浸食と埋没,風化の程度と時間スケールを明らかにするための調査を実施することができた.浸食量を明らかにするために行った霧島火山新燃岳2011年噴火に由来する降下火砕堆積物の分布調査は,今年度の調査で概ね完了したと言える(進捗率90%). 霧島火山由来の時代の異なる降下火砕堆積物の埋没量の調査については霧島火山の山麓部の数地点で測定を行った(進捗率30%).火砕物の風化の程度の分析については,新燃岳を起源とする時代の異なる火砕物を採取した(進捗率10%).全体的には今年度までで計画していた新燃岳の調査に関する進捗率は50%と言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
霧島火山新燃岳2011年噴火の降下火砕堆積物の浸食量調査では,今後採取した火砕堆積物の粒子サイズの測定などを行い,堆積物の産状の時間変化を明らかにする.また,霧島火山由来の時代の異なる降下火砕堆積物の埋没量の調査については,今後より遠方での埋没量を文献で公開されている柱状図などからコンパイルし,広域的な埋没量の時間変化を定量的に明らかにする.火砕物の風化の程度の分析については,今後,新燃岳起源の時代が異なる火砕物試料を対象に薄片作成や電子顕微鏡観察を行い,火砕物組織の風化の程度や粘土鉱物の生成,化学組成の変化を明らかにする.
|
Causes of Carryover |
今年度次年度使用額が生じた理由は,昨年度の次年度使用額が大きかったためである.昨年度分の繰り越しが多かった原因は新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言の発出および所属機関の活動制限指針により,移動と宿泊を伴う野外調査が実施困難であったためである.2022年度は霧島火山における残りの調査と試料の採取を行い,分析環境の整備と分析を進めて計画通りの予算使用を行う.
|