2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 康司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00838378)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 機械学習ポテンシャル / 第一原理計算 / 水素 / アルミニウム / 量子効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、水素による材料劣化機構の解明に向けて、機械学習原子間ポテンシャルを用いてアルミニウム中での水素挙動の解析を進め、下記の成果を得た。 (1)これまでの研究で、空孔や粒界を含むアルミニウム中に水素原子あるいは水素分子を含む多様な原子配置を作成し、これらの構造に対して密度汎関数理論に基づく第一原理計算を実施した。そこで、この訓練データを用いてニューラルネットワークポテンシャル(NNP)を作成した。次に、作成したNNPを用いた分子動力学(MD)計算から、水素原子の拡散係数を算出し、先行研究での計算値と近い値を得た。さらに、同じNNPを用いて経路積分セントロイドMD計算を行い、水素原子の原子核の量子効果を考慮した拡散係数を求めた。その結果、アルミニウム中では300K以下の温度で水素原子の量子効果が顕在化し、古典MD計算で求めた拡散係数よりも高い値となることがわかった。また、アルミニウム空孔や粒界を含む構造モデルでは、水素原子が欠陥位置に強くトラップされるという妥当な結果を得ることができた。 (2)項目(1)と同じ訓練データを用いて、qSNAPモデルを用いた機械学習原子間ポテンシャルを作成した。その結果、作成したqSNAPモデルは、アルミニウムのフォノンバンド構造やアルミニウム中での水素原子の拡散障壁を良い精度で予測できることがわかった。また、qSNAPモデルは計算速度の面でNNPよりも優れていることから、より大規模な構造モデルにおいてアルミニウムの劣化につながる動的現象の解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の異なる方法論による機械学習原子間ポテンシャルを作成し、それらの性能評価を実施することができた。また、古典分子動力学計算だけでなく、機械学習原子間ポテンシャルを用いた経路積分セントロイド分子動力学計算を進めることで、水素原子の拡散係数からその原子核の量子効果を確認するに至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、複数の方法論による機械学習原子間ポテンシャルにおいて、第一原理計算と同程度の物理量の予測が可能であることを確認した。今後、作成したポテンシャルを用いて、より大規模な構造モデルでの水素挙動の調査を進める。さらに、材料中での水素分布や、水素による材料劣化の機構ならびに水素原子の量子効果の影響について、詳細な解析を進めていく。
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