2023 Fiscal Year Research-status Report
有限温度磁性体の第一原理計算を応用した室温で高性能な磁気伝導材料の理論設計
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20K15017
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
小田 洋平 福島工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (80751875)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 結晶磁気異方性 / 異常ホール効果 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は窒化鉄Fe16N2の結晶磁気異方性における局所歪みの効果の解析およびノンコリニア反強磁性体Mn3Ptの異常ホール伝導度・スピンホール伝導度の第一原理的評価に取り組んだ。 α''構造のFe16N2の結晶磁気異方性については、特に結晶格子の軸比を反映した大域的な歪みと原子位置のパラメータを反映した局所的な歪みが一軸磁気異方性定数Ku与える影響について検証を行った。その結果、結晶を大域的に歪ませるだけではKu発現には不十分で、N添加によりFe格子が局所的に歪む効果が重要な支配因子であることを明らかにした。仮に局所的な歪みがない状態を考慮すると、Kuはほぼ0あるいは負の値になった。さらにN原子の位置に乱れが生じると、結晶格子の局所歪みが抑制されてKuが著しく低下することを示唆する結果を得た。このことがα''構造よりも規則度が低いα'構造やマルテンサイト構造ではたとえ大域的には結晶の軸比c/aが1.1となっても一軸磁気異方性を示さない理由の一つであると推察される。 L21構造のMn3Ptのホール伝導度計算について、ノンコリニアな磁気構造をもつ反強磁性体ではたとえ磁化がゼロであっても異常ホール伝導度が有限の値となることを本課題における理論計算でも示すことができた。ただしk点数のパラメータに対して計算結果が大きく依存するため、実験値との比較を考えた際の信頼性は低いと考えられ、前年度から引き続き検討している計算精度の問題点が残された形となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホール伝導度計算の精度に関する問題については依然として課題が残っているものの、他方で進めている磁性材料の結晶磁気異方性については材料開発のための新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を1年延長して計算機メモリの使用を削減するようプログラムの改造を行い、実際の物質を対象とした計算に引き続き取り組む。
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Causes of Carryover |
当該年度は旅費の支出が予定よりも少なかったため次年度使用学が生じた。残額については次年度の旅費として充当する予定である。
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