2020 Fiscal Year Research-status Report
圧電挙動その場観察蛍光X線ホログラフィーの開発と高性能非鉛圧電体への応用
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20K15024
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 耕治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20772875)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蛍光X線ホログラフィー / 圧電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高性能の鉛フリー圧電体(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3(BCZT)の構造と原子ダイナミクスを放射光X線によって詳細に解析する。特に、性能向上に寄与している添加元素のCaとZrの役割に注目している。 本年度は、まず、Caの添加効果に着目し、(Ba,Ca)TiO3単結晶の解析に取り組んだ。Ca周りの局所構造を調べるため、蛍光X線ホログラフィーを適用した。得られたCa周りの原子像を、同様に測定した置換元のBa周りと比較したところ、Ca周辺における格子の収縮が明瞭に観測された。これは、Caのイオン半径がBaよりも0.3A程度小さいことに起因すると考えられる。さらに、原子ダイナミクスを調べるため、(Ba,Ca)TiO3単結晶のX線非弾性散乱測定を実施し、フォノンの温度およびCa添加量依存性を調べた。分散関係を導出したところ、構造相転移温度付近において、音響モードがソフトになる様子が観測された。現在、光学モードに関しても解析を進めている。 次に、Zrの効果も調べるため、BCZTの解析にも着手した。単結晶育成が可能なZr置換量が1%以下の試料の蛍光X線ホログラフィー測定を実施し、Zrのホログラムの取得に成功した。現在、Zr周りの原子像を解析している。また、Zrの置換量が増えると単結晶育成が困難であるため、放射光マイクロビームX線を用いて、BCZT多結晶中の結晶粒を狙った蛍光X線ホログラフィー測定も試みたが、得られたホログラムデータに明瞭なパターンは観測されなかった。測定では、二次元検出器で蛍光X線を記録したが、散漫散乱とみられるシグナルが混在していたため、明瞭なパターンを形成しなかったと考えられる。現状、蛍光X線のみを取り出すための実験・解析手法の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、(Ba,Ca)TiO3単結晶の蛍光X線ホログラフィー解析、非弾性X線散乱によるフォノン解析に取り組み、さらに(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3多結晶のホログラム測定に着手することができたことから、おおむね計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、放射光マイクロビームX線を利用して、(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3多結晶から質の高いホログラムを取得することが課題となる。そのために、データに混在する散漫散乱の低減および除去法、収束イオンビームによる結晶粒の切り出し、などを検討する。さらに、既に取得した(Ba,Ca)TiO3単結晶のデータの解析を進め、Caの役割を詳しく考察する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、放射光施設や研究打ち合わせのための学生の出張を取りやめたため。
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