2020 Fiscal Year Research-status Report
長残光蛍光体における表面欠陥と光学および残光特性の関係
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20K15030
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
渡邉 美寿貴 中央大学, 理工学部, 助教 (60847987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 長残光 / 蛍光体 / 表面欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、発光イオンとして二価のEuを添加したアルカリ土類(M)アルミン酸塩の長残光蛍光体の表面欠陥と発光・残光特性の関係を調査している。 実用化されている単斜晶系SrAl2O4:Euについて、Eu添加量を変えることで欠陥量が変化するか否かを検討した。カーボンを利用することで結晶構造を維持したままSrをすべてEuに置換した試料を合成可能な手法を見出し、広いEu添加範囲の試料を観測した結果、Eu添加量によって発光特性が大きく変化することを明らかにしつつある。Eu添加量が30mol%までに急激に燐光寿命が短くなり、以降はほぼ一定の値をとる。この挙動は、SrAl2O4:Eu構造中の二つのSrサイトのEu占有率の比がEu添加量の増加に伴い変化する挙動と類似しており、結晶構造と発光特性の間に関係性があることを見出した。また、残光寿命には構造欠陥が関係していることから、Eu添加量によって構造欠陥が変化していることが示唆された。Eu濃度を調整することで発光寿命を制御が可能となることが期待される。また、合成方法による欠陥状態の変化を検討した結果、カーボンを利用した手法により、既存の合成法と比べ、内部量子効率が約2倍に向上し残光寿命も1/3程度短くなった。合成法の違いにより、試料中の表面欠陥を含めた構造欠陥量が異なるためであると考えられ、試料の発光・残光特性は構造欠陥に依存していることが確認できた。 さらに、真空熱処理により表面吸着物質を除去し、そのまま大気暴露することなく光学測定が可能な独自のガラスセルユニットを作製した。このセルを用いることで表面吸着物質の影響のない状態での評価を試みた結果、SrAl2O4:Euにおいて、真空熱処理によりその発光強度が1/2、内部量子効率が1/3にそれぞれ減少た。これらの現象は、真空熱処理による表面欠陥量の増大に起因するものだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試料の合成および構造解析、基本的な発光・光学特性の評価は順調に進んでおり、独自のセルを用いて試料中の表面欠陥を含めた構造欠陥量が試料の発光・残光特性に影響していることを見出している。しかしながら、構造欠陥に関する評価が困難であるため、欠陥量のEu量依存性や残光・発光特性と構造欠陥の関係性に関して定量的に議論できないのが現状である。また、光電流測定装置の完成が遅れており、残光特性を考えるうえで重要な局在励起電子準位(5d 準位)とホストの非局在系電子構造(価電子帯・伝導帯)の相対的な位置関係を議論できる段階にないため、このように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
残光時間が長く、実用化されているSrAl2O4 : Euを中心に、熱発光測定および光電流測定に関して詳細な調査を行っていく。また、Eu添加量と構造欠陥の関係性と構造欠陥量や欠陥種を明らかにし、発光・残光特性に与える影響をさらに詳しく調査する。
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Causes of Carryover |
現在までの結果より、光電流測定装置系の部品(ピコアンメータおよびクライオスタット)を見直したため、また、外部での測定の日程調整等の関係上次年度に持ち越しとなった。
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