2021 Fiscal Year Research-status Report
X線全散乱を利用した非晶・結晶混合物に対する革新的構造解析技術の確立
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20K15031
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
廣井 慧 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 博士研究員 (10761588)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | X線全散乱測定 / 原子対相関関数 / 結晶PDF解析 / 結晶・非晶混合物 / 蓄電材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究課題の主たる研究対象であったLi2VO2Fに対する構造解析を行った結果を学術論文にまとめ、Chemistry of Materialsに投稿した。投稿の際に、Journal cover pageのイラストを併せて投稿し、採択された。さらに、本研究に使用された構造解析方法(結晶PDF解析法)は、今後様々な実材料・実デバイスへの応用が期待されると判断したため、当該研究をまとめたSPring-8プレスリリースを公開し、広く解析方法の周知に努めた。本研究は横浜で開催されたMaterials Research Meeting 2021(12月開催)や、日本結晶学会令和3年度年会(11月開催)で発表を行った。 また、2021年度は正極材料Li2VO2F以外の材料に対する構造解析も行った。リチウムイオン電池用三元系正極材料は結晶・非晶混合系ではないが、充放電に伴う構造変化を検出するために、本研究で開発した結晶PDF解析法を利用して解析した。この研究により、結晶PDF解析法は、カチオンの移動などで生じる結晶中の乱れを高感度で検出できることが見出された。この結果は2022年第69回応用物理学会春季学術講演会(3月開催)で発表した。また、すでに論文原稿を書き終えており、近日中に学術誌へと投稿予定である。そのほか、合金ナノ触媒等の蓄電材料以外の実材料に対する構造解析も行っており、こちらも2022年第69回応用物理学会春季学術講演会(3月開催)にて発表した。 また、幾つかの蓄電材料開発グループの依頼を受けて、主に正極材料を対象として結晶PDF解析法による結晶構造解析を実施している。この研究成果は2022年度中に報告されるものと見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標の一つであった「X線全散乱を利用した非晶・結晶混合物に対する構造解析技術の確立」がほぼ達成できたためである。本解析技術を解析難度の高いLi2VO2Fに適用することで、結晶・非晶相の構造情報を分離し解析可能であることを示すことができた。現在、本解析ソフトウェアの開発はマイナーアップデート(バグ修正、処理効率化、速度向上等)に留まっており、既に様々な材料に適用できる用意は整っている。今後は適用材料を蓄電材料に限らず様々な実材料に広げていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、リチウムイオン電池用三元系正極材料を対象として、本研究課題で開発した結晶PDF解析法による構造解析を進めている。解析の結果、従来のRietveld解析では検出が困難な充放電に伴うカチオン移動が確認されている。これは、本解析方法が既存の結晶構造解析法にない優位性を持っていることを示唆しており、得られた結果は既にまとめている。本研究は近日中に学術誌への投稿を予定している。 また、本解析方法を様々な材料、例えば他の結晶・非晶混合物や合金ナノ触媒等に適用し、材料を問わず構造情報を得ることができることを示し、順次学術誌への投稿を行う。 本研究課題で開発した結晶PDF解析ソフトウェアを広く研究者に利用してもらうことを念頭に、ソフトウェアの改良、特にグラフィカルインターフェース開発を行う。本解析ソフトは、現状コマンドラインとテキストファイルを多用する形式をとっており、コンピュータ操作に不慣れな研究者にとって扱いにくい。マウスの使用等直感的な操作を可能とすることで、様々な研究者に、簡便に利用してもらえるような土壌造りに努める。
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Causes of Carryover |
2021年度は学術論文のオープンアクセス費および英分校閲費としての使用が想定されていたが、当該助成金での支払いの必要がなくなったため、その分が次年度使用額となった。 次年度使用額の計画としては、2021年度と同様オープンアクセス費および英文校閲費として使用する予定である。また、所属学会の学術講演会参加費・旅費等に充てることも考えている。
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Research Products
(6 results)