2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of relationship between growth factor adsorption onto calcium phosphates exhibiting different solubility and osteoblastic differentiation
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20K15037
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱井 瞭 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00824004)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / 溶解度 / 溶解-再析出反応 / タンパク質吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
生理的環境下で準安定相であることから溶解性を示すリン酸八カルシウム(octacalcium phosphate)は,安定相であるハイドロキシアパタイトに加水分解される過程で骨伝導性を発現することが知られている.当該年度は,リン酸八カルシウムの加水分解反応が血清タンパク質および成長因子のモデルタンパク質の吸着・集積に及ぼす影響を基礎的に検討した.タンパク質の吸着挙動の評価に先立ち,リン酸八カルシウムの加水分解反応が生じるような,ヒト血清と同様の濃度でCaイオンおよび無機リン酸イオンを含み,生理的環境下に類似のイオン強度とpHを示す緩衝液の調製を試みた.検討の結果,添加したフッ化物イオンの濃度やpH,浸漬期間をコントロールすることで,溶液中でリン酸カルシウム塩の自発的沈殿が生じることなく,徐々にリン酸八カルシウムがハイドロキシアパタイトに加水分解される実験条件を見出した. 上記の緩衝液中での浸漬条件を適用し,リン酸八カルシウム結晶表面への血清タンパク質および成長因子モデルタンパク質それぞれの吸着量を測定した.その結果,フッ化物イオン濃度に依存した加水分解反応の進行度合いによって,タンパク質の吸着・集積量が調節されることが示唆された.また,塩基性の成長因子モデルタンパク質の吸着挙動は,酸性の血清タンパク質と異なる傾向にあった.X線回折ならびにフーリエ変換赤外分光光度計による分析により,リン酸八カルシウムの加水分解反応がタンパク質の吸着およびその種類によって変化することも示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は,モデルタンパク質の吸着挙動の検討に加え,加水分解の過程による結晶の表面性状変化に関する分析を進めるとともに,実際の成長因子の吸着挙動の検討にも着手する予定であった.しかし,吸着挙動の検討に先立ち,リン酸八カルシウムの加水分解が進行するような最適条件を見出すために想定以上の時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
加水分解を誘起可能な過飽和溶液中におけるリン酸八カルシウム結晶の物理的・化学的な表面状態の変化を分析し,初年度に明らかとしたモデルタンパク質の吸着挙動との紐付けを試みる.また,リン酸八カルシウムの加水分解過程そのものが吸着挙動を調節し得るのかを明らかとするため,同様の溶液中でのハイドロキシアパタイトのタンパク質吸着挙動と比較検討する予定である.さらに,生体環境におけるタンパク質の吸着挙動を詳細に検討するため,血清タンパク質共存下における成長因子モデルタンパク質や実際の成長因子の吸着挙動の検討を実施することを計画している.
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Causes of Carryover |
吸着挙動の検討に先立ち,リン酸八カルシウムの加水分解が進行するような最適条件を見出すために想定以上の時間を要し,当初の計画であったOCPの表面状態の分析の実施や実際の成長因子の吸着挙動の検討に至らなかったため,次年度使用額が生じた.翌年度分として請求した助成金は,成長因子などの試薬や関連の消耗品の購入費および,大学共通の分析機器の利用料としての使用を計画している.
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Research Products
(4 results)