2020 Fiscal Year Research-status Report
異種化合物の化学結合を介した超分子的複合化および接合界面での導電性発光特性
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20K15041
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大曲 仁美 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40846797)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複合材料 / 発光希土類錯体 / 酸化グラフェン / 導電性発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合材料は異なる特性の材料を複合して一つの材料として使用しているもので、各々の機能性を打ち消すことなく最大限に発現するためには複合材料の界面の分子の並び、電子状態、相互作用を考慮した綿密な分子設計が必要不可欠である。一方で、それぞれの機能性の共存は可能であるが、様々な外場(熱、光、電場、磁場など)に応答し、各々の物性を協奏的に制御することは難しく報告はほとんど見当たらない。本研究では、二次元材料と機能性金属錯体に注目しており、二次元材料の平面構造を錯体の集積場、電子伝達経路として用い、機能性金属錯体としては特に発光特性に注目し、電場に応答した発光特性の制御を目指している。 酸化グラフェンはグラフェンの表面に多様な酸素官能基を多く有する炭素薄膜であり、イオン伝導性、圧電性等様々な機能を示す。本研究の目的は、酸化グラフェンと発光性ランタニド錯体を複合化することによって、互いの機能性が協奏的に働く新たな二次元発光・導電材料の創成である。開始1年目の研究実績として、発光性希土類錯体に関する論文を多く報告した。 2020年にChemistry lettersにπ電子系をもつ有機分子を希土類イオンに配位させた、ヘリカルな分子構造を有する発光性の希土類錯体について報告している。この論文で報告している希土類錯体のいくつかは水溶液中やイオン液体中でも安定に存在することがわかっており、酸化グラフェン上に担持する分子の多様性と安定性が期待される。また共同研究によって報告した“Electrofluorochromic Device Based on a Redox-Active Europium(III) Complex”ではイオン液体中でも安定な錯体を用いて電位に応答して色が変化する新素材の開発にも成功しており、酸化グラフェンにおける二次元発光・導電材料の創成の実現が十分に期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、酸化グラフェンと発光性の希土類錯体を複合化することによって、互いの機能性が協奏的に働く新たな二次元発光・導電材料の創成を目指している。本研究課題を進めるにあたり、初年度は酸化グラフェンと発光性希土類錯体の合成、および複合化を計画していた。現在までの進捗状況として、当初の研究計画の通り、多様な酸素官能基を有する酸化グラフェンを合成および水中あるいはイオン液体など媒質にかかわらず安定に存在する発光性の希土類錯体の合成にも成功している。 酸化グラフェンと発光性希土類錯体を混合した複合体については新たな知見が得られた。紫外光を照射することで強い赤色の発光を示すユウロピウム錯体を用いて、酸化グラフェンとの複合化を試みた。しかし、酸化グラフェンと混合することで配位子からユウロピウムイオンへのエネルギー移動が阻害され、赤色発光が観測されなかった。そこで、用いた錯体の末端にアルキル長鎖を導入した両親媒性の錯体を合成し、酸化グラフェンへ担持した。その結果、目視でも赤色発光性を観測できる複合膜の合成に成功した。現在テルビウム錯体についても同様の実験を行い、発光スペクトルを確認しており、酸化グラフェンと錯体との界面の様子や電子状態について今後評価していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究では、発光性希土類錯体と酸化グラフェンの複合膜の作製にすでに成功しており、今後のとして複合膜の機能性評価を行う。 二次元シートと希土類錯体との複合体の発光特性評価には光導波路分光法を用いる。光導波路分光法は数μm~100μmの厚みのスラブ(板)型光導波路に白色光をプローブ光として伝播させ、これが光導波路と試料溶液界面で全反射する際に生じるエバネッセント波を用いて、表面や界面における試料の吸収スペクトルを測定することが可能である。これにより二次元膜と発光性希土類錯体との複合化による界面相互作用による発光特性の変化を確認する。 つづいて、電流を流した状態での発光特性の変化を観察する。複合膜はLB膜製造装置を用いることで基板上に製膜することが可能である。ナノシート材料の電気化学特性の評価に使用される櫛型電極を基板として用いてその電極上に複合膜を製膜し電気化学特性の測定を行なう。 また、複合化による発光導電特性の変化、および電子伝導時の発光強度、寿命等の変化から、異種化合物間界面でのエネルギー移動や機能性発現に与える影響を考察し、成果報告を行う。
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Research Products
(10 results)