2020 Fiscal Year Research-status Report
材料工学的手法を基軸とする生体微量金属元素としてのCuによる骨強度制御機構の解明
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20K15048
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小笹 良輔 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80845347)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体必須金属元素 / 銅 / 骨組織 / アパタイト配向性 / 骨強度 / 骨質 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、銅(Cu)欠乏症の骨は正常骨密度にもかかわらず低強度であるという事実から、骨の力学機能を制御する候補因子としてCuに着目した。本研究の目的は、生体必須金属元素としての銅が骨力学的機能を制御するメカニズムを、骨の主成分である六方晶系を有するアパタイト結晶の集合組織、結晶成長過程といった結晶学的立場から解明することである。具体的には、以下の項目について研究を実施した。 (A)Cu欠乏における骨強度低下機構解明:Cu濃度を低下させたCu欠乏食を一定期間投与し、in vivo(生体内:生体骨におけるアパタイト形成挙動)実験系を確立した。Cu欠乏により骨密度は変化しないものの、Cu欠乏食投与に対応して骨長手に沿ったアパタイトc軸配向性が有意に低下した。さらに低配向性を示した骨部位においてはヤング率が低下した。以上により、Cuはin vivoにおいて、その濃度に依存してアパタイト配向性を制御することが示され、結果としての骨力学機能を変化させることが示唆された。これは構造材料としての骨組織の機能発現機序の一端を明らかにする重要な知見であり、骨脆弱性を呈する疾患骨に対する治療法にもつながる可能性を秘める。 (B, C)マルチスケール観察によるアパタイト核生成・結晶成長挙動の解明:Cu濃度を変化させた生体骨に対し、(B)微小領域X線回折法を用いてアパタイト結晶の平均結晶粒径、c軸優先配向性、格子定数などの各種結晶学的因子の変化/不変を明らかにした。(C)電子顕微鏡観察のための試料の作製条件を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載のとおり、本年度(令和2年度)に計画していた項目を、おおむね計画通りに遂行した。特に、2年間の研究期間における最終目的である、Cuを用いた生体骨の強度・結晶集合組織の制御に対して、前半のR2年度で、すでにCu欠乏による低骨強度の原因がアパタイト配向性低下にあることを世界で初めて解明している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に見出した、Cu欠乏における骨強度制御因子としてのアパタイト配向性を基軸に、令和3年度はその形成・制御機序に迫ることを目標とする。今後は、in vivo実験系に加えて、in vitro実験系による人工的アパタイト合成を並行して研究を推進し、Cu濃度と配向性・骨強度との関係性の定量的な理解を進めるとともに、透過・走査電子顕微鏡を用いたミクロ・ナノスケールでのアパタイト形成過程の直接観察による配向化機序の解明を目指す。最終的には、ミクロ・マクロでの解析で得た定量化データを統計学的に分析し、Cu濃度が骨の力学機能を変化させるまでの作用機序を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(7 results)