2021 Fiscal Year Research-status Report
局所的分極方向制御を可能とした金属基圧電複合材料の創製と新機能発現
Project/Area Number |
20K15053
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
柳迫 徹郎 工学院大学, 工学部, 准教授 (80784628)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スマート材料 / 圧電複合材料 / 分極制御 / 金属基複合材料 / 知的材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所的分極制御を可能とした金属基圧電複合材料の創製を目的とし,本年度においては,複数本の表面酸化金属繊維を複合化した圧電セラミックスの作製条件最適化を行った.これは,金属繊維と圧電セラミックスの線熱膨張係数が異なること,圧電セラミックスは焼結前は粉体であり焼結中に収縮が生じ金属繊維との間で応力が生じること,および金属繊維を内部に配置するために圧電セラミックス粉体の成形を2回に分けていることから,金属繊維付近で亀裂が生じることが予想されたためである.作製条件最適化においては,表面酸化金属繊維はニッケル,圧電セラミックスはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて,焼結時における昇温速度および降温速度が得られた焼結体に及ぼす影響を相対密度を用いて評価した.結果として,昇温速度向上および降温速度低下により相対密度が向上し,最大で93%の相対密度を得ることが可能であった.これは,昇温時においてはPZT粉末が焼結することによって収縮するが金属繊維は熱膨張により伸長するため速やかに焼結温度まで到達させることによりこのミスマッチを最小にすることができるためと考えられる.また,降温速度を遅くすることにより熱膨張係数の差による熱応力の発生を最小限にとどめられることに起因する. 加えて,得られた焼結体を界面層形成・接合法を用いることで純アルミニウム母材に複合化することに成功した.得られた複合材料の横断面および縦断面観察により,PZTとアルミニウム間の反応やPZTおよび金属酸化膜の損傷が確認されなかったことから,機械的および化学的な損傷なく金属中に複数本内部電極を有した圧電セラミックスが複合化可能であることが示された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所的分極制御を可能とした金属基圧電複合材料の創製のための複数本の表面酸化金属繊維を複合化した圧電セラミックスの作製条件最適化を行った.また,この複数本の金属繊維を有した圧電セラミックスを機械的・科学的に損傷なくアルミニウム中へ複合化することに成功した.また,前年度において有限要素解析をベースとし,金属基圧電複合材料における分極処理条件の検討が行えているため,本年度において作製した金属基圧電複合材料の電極-母材間および電極-電極間で分極処理を行うことにより,局所的分極制御を可能とした金属基圧電複合材料が実現可能であることが予想され,進捗状況としてはおおむね准将に進展していると判断する.
|
Strategy for Future Research Activity |
複数本の内部電極を有した金属基圧電複合材料を作製することに成功したため,今後は分極処理を行い,局所的分極制御を実現することを目指す.具体的には2本の電極を複合化し,電極-母材間および電極-電極間に電界をかけ,それぞれの領域において分極方向を制御する.このように分極処理を行うことで,複合材料に応力が生じた際に電極から得られる電荷によって多軸応力の測定が可能であることが期待される.出力電荷は,生じた応力と分極方向に依存するため,局所的分極制御を可能とすることにより多軸応力(例えば電極長手方向の垂直応力と複合材料の最も大きな面に生じるせん断応力など)の測定が可能となる.この評価においては,複合材料に多軸応力が生じる必要があるため,専用の治具を設計し,これをテンシロン型万能試験機に取り付けることで試験を行う.また,圧電材料からの出力は電荷であるため,静的な応答特性は極めて低いことが予想される.このため,万能試験機をサイクル動作させることにより動的な荷重印加を実現しその際の出力電荷を測定することにより評価を行う.また,内部電極間の距離や形状,圧電セラミックスの形状により特性が変化することが予想される.このため,有限要素解析を用いることにより,より出力電荷が向上する構造最適化を行う.
|
Research Products
(3 results)