2020 Fiscal Year Research-status Report
Microstructure control of carbon steel based on the investigation of precipitation mechanism of fine precipitates
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20K15055
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 元貴 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00749278)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 析出物 / 鋼 / 炭素鋼 / 結晶粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車や建設機械等の部品に使用される炭素鋼中の微細析出物は結晶粒組織制御に不可欠であり、これらの析出メカニズム解明が、熱処理プロセスや組成の最適化において重要である。そこで本研究では、炭素鋼における複数種類の微細析出物の析出メカニズムを詳細に解明し、熱処理プロセスおよび材料組成の最適化による炭素鋼の自在な結晶粒組織制御を目的とした。2020年度は、AlとNb、Nを添加した鋼を1250℃で1時間保持し析出物を鋼中に固溶させた後、水冷及び20℃/min、4℃/min、0.7℃/minの冷却速度で室温まで炉冷し、析出物を調査した。次に、これらの試料を1070℃で3時間焼ならし後、20℃/minで室温まで炉冷し、析出物を調査した。そして、試料を1050℃で5時間のオーステナイト化後に水冷した。
1250℃保持後に水冷した試料をTEM観察した結果、AlNやNb(C,N)は観察されなかった。1250℃から20℃/minで冷却した場合、微細なNb(C,N)の析出が認められ、AlNは析出しなかった。冷却速度4℃/minでは、単独のNb(C,N)に加えて、Nb(C,N)と複合化したAlNが少量析出した。冷却速度を0.7℃/minまで遅くすると、AlN-Nb(C,N)複合粒子が粗大に析出した。これらの材料を1070℃で焼ならすと、いずれの冷却条件でもAlN-Nb(C,N)複合粒子が多く析出した。これらの結果から、先に析出したNb(C,N)粒子が、その後のAlN析出の核形成サイトとなることが明らかとなった。さらに、AlN-Nb(C,N)複合粒子は高い整合性を有する界面を形成しており、このためAlNとNb(C,N)が複合化しやすい可能性が示された。1250℃からの冷却速度が早いほど、焼ならし過程で過飽和固溶していた析出物が微細に析出し、オーステナイト化後の結晶粒組織が微細化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルスの影響により、実験の中断・延期が余儀なくされた。さらに、所属機関の変更のため、研究が一時中断した。このため、やや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
1250℃からの冷却および焼ならし過程における析出物の析出温度と核形成サイトが不明である。これらの知見は熱処理プロセスや材料組成を最適化するうえで重要であるため、1250℃からの冷却途中、また焼ならしの途中で試料を水冷する実験および加熱TEM実験により、析出物の析出温度と核形成サイトをさらに調査する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で研究が一時中断し、学会等の出張が中止となり、旅費の未使用額が多く発生した。研究期間の途中で所属機関が変更となったため、備品の購入を先送りした。これらの理由により、次年度使用額が生じた。今後、試料作製のための備品および実験データの解析に必要なソフトウェアの購入を予定している。
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