2020 Fiscal Year Research-status Report
四次元その場観察による凝固組織をベースとした固液共存体の力学挙動の解明
Project/Area Number |
20K15071
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳴海 大翔 京都大学, 工学研究科, 助教 (20827448)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 凝固 / 鋳造 / その場観察 / 固液共存体 / マクロ偏析 / X線イメージング / トモグラフィ/4D-CT / 三次元X線回折/3DXRD |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題はX線イメージング技術である時間分解トモグラフィー(4D-CT)と三次元X線回折(3DXRD)を用いて、金属合金の固液共存体の変形過程における固相粒子の並進運動および回転運動を定量化し、力学挙動と内部組織の関係を定量的に明らかにすることで、固液共存体の力学モデルを構築するための基礎データの獲得を目的としている。特に、固液共存体中の固相粒子の形態・形状を制御する技術を開発し、観察試料に供することで解明を目指す。 固液共存体中の固相粒子の形態・形状の制御: 一般に粒子が粒状の場合に運動が平易になるため、等軸晶組織を有するAl合金やFe合金の固液共存体の変形過程のその場観察が行われているが、本課題では微量元素の添加により結晶の異方性を制御可能なSiおよび炭化ケイ素(SiC)粒子が分散した固液共存体を用いる。溶融Si中に分散したSiC粒子の場合では、微量のAlを添加して液相線温度以上で一定時間保持するとSiC粒子が板状に成長する。また、溶融SiをSi-Cr合金に変更するとロッド状に成長させることが可能である。今後は形態や形状に加えて粒子サイズや数密度の調整を行い、観察試料に供する。 X線イメージングを用いた固液共存体の変形過程の三次元・時間分解その場観察: 高温の金属合金の固液共存体の変形過程における固相粒子の運動を観察するためのプラットフォームはすでに観察実験に繰り返し使用されており、観察の基盤は構築されつつある。観察装置に付設された変形機構にロードセルを組み込み、高温の変形時の荷重測定が可能であることも確認している。現在は測定精度を向上するための改良を行なっている。また、固相粒子の並進運動および回転運動を定量解析するための三次元画像解析および結晶方位解析については、精度を検証する段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題を遂行するために必要な課題として(1)固相粒子の形状・形態を制御した固液共存体の作製、(2)固相粒子が分散した固液共存体の観察技術および解析技術の構築、がある。 当初の計画通り、2020年度では主に(1)に注力し、特定の形状・形態を有する固相粒子を作製できる状況になっている。今後は、観察に適した粒子サイズや数密度に制御するため、実際に観察を行い調整を進める段階である。 (2)に関しては、観察装置や解析環境を用いた試験を進めており、技術的なノウハウの蓄積や解析手法の開発といった、研究遂行に必要な基盤が構築されつつある。 以上の理由から順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度からは、主に固相粒子の形状・形態を制御した固液共存体の変形過程を実際に観察し、定量解析するフェーズになる。本課題で有意義な結果を獲得するため、下記の方向で研究を進める。 (a) 固相粒子の形態・形状を制御した固液共存体の変形過程の三次元・時間分解その場観察:時間分解トモグラフィー(4D-CT)と三次元X線回折(3DXRD)、力学特性の同時計測によって固液共存体の変形過程の定量解析を行う。異方性を持つ固相粒子では、固相率や固相体積が球状粒子と同等の場合でも、固相粒子の形態・形状により変形時の挙動が異なると予想される。組織の違いによる固液共存体の力学挙動の差異を直接観察して定量化する。 また、観察を予定していた放射光施設の更新があり、当初予定していたよりも広い観察視野が確保できる可能性があり、観察に適した試料の調整を進める。 (b)解析の精度検証:本課題では、三次元結晶方位解析により、変形前後の固相粒子の結晶方位の変化から回転運動を定量化する。放射光を用いてその場観察した試料の断面組織を走査型電子顕微鏡と電子線後方散乱回折により方位解析することで、精度の検証を行う。
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