2020 Fiscal Year Research-status Report
流通式ガス分離・再生プロセス時に発現するハイドレート内の非平衡ガス濃縮現象の解明
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20K15073
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小松 博幸 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30738076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハイドレートスラリー / 連続ガス分離 / 物質移動現象 / 固形分率 / 流動様相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではセミクラスレートハイドレート(SCH)をスラリー化し,再生プロセスまでを流通式とした連続ガス分離システムを検討する。その際,SCH粒子内の非平衡ガス濃縮現象を解明し,その現象を効果的に発現させるSCHの形成及び分解操作を検討することで,回収率およびガス選択度の向上を目的とする。具体的には,ガス流通時におけるSCHの形成挙動とガス吸収挙動の関係を明らかにする。加えて,3塔式連続ガス分離装置にてSCHスラリーの輸送速度による固形分率制御がガス濃縮現象に及ぼす影響を明らかにする。 令和3年度の検討では,2塔式エアリフトリアクター型のガス吸収装置を用いてCO2流通時のSCH形成挙動を調査した。SCHのゲスト分子としてtetra-n-butylammonium bromide (TBAB)を用いた。CO2を流通させた後のSCHの固形分率の経時変化は,気泡塔型装置におけるCO2吸収量の経時変化と同様の傾向であった。また,平衡時の固形分率はフラスコ内のスラリーにCO2をバブリングさせて測定した時と同等の値となったことから,エアリフトリアクター内でも適切にSCHスラリーの固形分率を測定できることを確認した。 気泡塔型装置を用いてSCHスラリーへのCO2吸収量を測定する際,SCHのゲスト分子としてTBABとtetra-n-butylphosphonium bromide (TBPB)を用いた。その結果,280 Kではスラリー全体が凝集したが,最も大きい平衡吸収量であった。これよりスラリーが凝集する前に平衡吸収量付近まで達することを確認した。また,一時的に温度を2 K低下させた際の平衡吸収量は,280 Kの時に顕著に増大し,理論的な平衡吸収量以上であった。これより,温度低下による固形分率の増加量が大きいほど平衡状態から大きく変化し,CO2がSCH内により濃縮されると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4極式導電率センサーを用いたSCHスラリーの固形分率測定は,開発したエアリフトリアクター内でもフラスコ内と同様に可能であることを確認した。また,温度変化を加えた非平衡ガス吸収させた際の挙動についても確認し,熱力学的相平衡モデルによる推算値と比較することで,このCO2吸収挙動とSCH形成挙動との関係性を見出すことに成功した。以上のことから概ね順調に進展していると判断した。 ただし,これらは異なる実験装置での結果を比較することで得られた仮説であり,吸収量と固形分率の同時測定することによるこの仮説の検証は行っていない。そのためには,高圧条件での実験も必要であるが,エアリフトリアクター内でスラリーが凝集してしまい,適切に実験が行われていない。そのため,スティックミキサーの導入などで改善させてから,3塔式のガス分離実験に移行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
スタティックミキサーを導入し,CO2流通時におけるエアリフトリアクター内のスラリー流動性を改善する。また,気液分離部の配管の形状を変えることでも流動性改善を検討する。ここで得られた成果を考慮しながら3塔式の装置を開発する。 気泡塔型ガス吸収装置を用いて,温度変化のさせ方がガス選択度に及ぼす影響を明らかにする。これよりガス分離時に,どのような操作で分離効率が向上するかを把握した後,同様の固形分率の変化になるように3塔式装置での操作条件を設計する。 以上のことから得られた知見を基に,3塔式装置を用いて,ガス分離プロセスとスラリー再生プロセスを同時に動かし,定常状態におけるCO2回収率や排出ガスのCO2濃度を測定する。この結果より,本装置における連続ガス分離性能を評価する。
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