2020 Fiscal Year Research-status Report
ペレット状ソフト多孔性錯体に見られるゲート吸着挙動の緩慢化現象の究明
Project/Area Number |
20K15074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平出 翔太郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (60853207)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ソフト多孔性錯体 / ゲート吸着 / 外力印加 / 自由エネルギー解析 / 成形加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフト多孔性錯体(Soft MOF)は構造柔軟性に起因したステップ状の吸着(ゲート吸着)を示すが,粉末試料を高分子バインダーでペレット加工すると,そのステップ形状が緩慢になることが明らかとなっている。本研究課題では,この原因がSoft MOFが高分子バインダーから受ける外力にあると仮定し,その立証を行う。 本年度は,積層型Soft MOFであるELM-11のペレット化と,ELM-11を模した構造モデルを用いた計算科学的検討を行った。まず,実験では,高分子バインダー(ポリビニルピロリドン,PVP)の含有量を変化させ,CO2吸着等温線(273 K)を測定したところ,PVP含有量が多くなるほど,緩慢化の度合いがより大きくなることがわかった。特に,PVPの含有量の増加につれて,吸着等温線形状が上に凸の曲線から,直線状へと変化していくことが特徴的であった。 分子シミュレーションを援用した自由エネルギー解析からは,Soft MOFの骨格構造が独立に変形可能な自由度をもつ場合(ELM-11では積層している層のそれぞれが独立に構造変形可能),応力印加によって系の自由エネルギープロファイルが変化し,圧力に依存した最適な構造変形率が存在することが明らかとなった。また,印加される応力プロファイルによって,吸着等温線の緩慢化具合が変化し,実験でのPVP含有量大のときの直線的プロファイルはバネポテンシャルで,含有量小のときの曲線的なプロファイルはsoft repulsive shoulder potentialで説明可能なことがわかった。加えて,ゲート吸着は吸脱着でヒステリシスを生じるが,応力印加時では吸着量が増加するほどヒステリシス幅が大きくなることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り極めて順調に進展しており,本年度の上記成果はすでに論文としてまとめ上げ,ACS Applied Materials & Interfacesに投稿しており,現在査読を受けている。また,作成予定であった自動吸着測定装置もハードウェア・ソフトフェアともにすでに完成しており,稼働している。加えて,次年度に予定していたELM-11とは異なる柔軟性を有する相互貫入型MOFの合成・ペレット化にもすでに着手しており,十分な考察がまだ与えられていないものの,実験データはほぼ出揃っている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である次年度は,①上記の相互貫入型MOFの実験結果を精査し,ELM-11の結果と比較・考察を行うことと,②ELM-11を模した構造モデルに対し,吸着状態から2枚の平板で狭窄していくことで,各層が独立に変形していく過程が起こりうるかを分子動力学シミュレーションから明らかにすることが焦点である。どちらも当初の研究計画通りに推進する。
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Research Products
(9 results)