2020 Fiscal Year Research-status Report
Suppression of Coffee Ring Effect by Controlling Morphology of Particle Aggregate
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20K15075
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三野 泰志 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70709922)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 粒子懸濁液 / 乾燥 / コーヒーリング現象 / 格子ボルツマン法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、粒子懸濁液滴の乾燥過程で生じるコーヒーリング現象を凝集体の存在によって抑制することを目指している。本年度はシミュレーションと実験を以下のように行った。【シミュレーション】本年度は主に、粒子懸濁液の乾燥過程をシミュレートするためのモデル開発を行った。モデルのベースには格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann method、LBM)を用いた。液中に存在する粒子の運動を効率良く計算することのできる改良Smoothed Profile(iSP)法と二流体系を非平衡熱力学に基づいて記述可能な自由エネルギー型LBMを組み合わせたモデル(Mino and Shinto, Phys. Rev. E (2020))に対して、溶媒の蒸発モデルを導入した。また、固体粒子が分散している二流体間に密度差が存在する場合にも適用可能なモデルを開発した。構築したモデルを用いて、粒子懸濁液の乾燥過程の二次元シミュレーションを行った。まず、少数の粒子を含む場合について、溶媒の蒸発に伴う粒子周りの界面形状の変形および蒸発速度の変化について調査した。その結果、界面曲率に応じた蒸発速度の変化を明らかにするとともに、蒸発速度の粒子表面特性に対する依存性を見出した。次に、多粒子の場合について、溶媒の蒸発に伴って粒子が界面に集積することを確認した。このとき、粒子の表面特性に応じた集積構造の変化が見られた。以上の結果は、本年度に構築したモデルが蒸発による粒子の集積過程を良好に再現していることを示すものである。【実験】シミュレーションモデルの開発と並行して、予定していた実験的検討の一部を実施した。基板上に滴下した粒子懸濁液の乾燥過程において、粒子の形状および大きさがコーヒーリング現象に及ぼす影響を調べた。また、次年度に行うin-situ観察に向けて実験系の設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナの感染状況の悪化により大学での実験を計画通り行うことが困難であると判断し、リモートでの対応が可能な数値計算に関する検討の比重を増やして研究を進めた。その結果、シミュレーションモデルの開発に関して計画よりも進展しており、蒸発による粒子の集積過程の検討が可能な段階に到達した。一方、実験による検討は計画より少し遅れており、モデル実験系の設定が完了した段階にある。以上のように、当初の計画とはやや異なる研究の進め方ではあったが、シミュレーションによる検討と実験による検討の進捗状況を総合的に評価し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
【シミュレーション】粒子懸濁液の蒸発過程を記述するシミュレーションモデルの構築が二次元系について概ね完了し、その三次元系への拡張を行っているところである。次年度はこのモデルを用いて、凝集体構造が界面における粒子間相互作用に及ぼす影響を明らかにする。検討する因子の種類が多く、また予測していたよりも計算に必要となる時間が長かったため、使用するワークステーションの数を増やして検討の効率化を図る。【実験】実験により、粒子懸濁液の乾燥による粒子集積現象における凝集体構造の影響を調べる。実験による検討を行うための予備的な検討は既に終えたため、集積現象に影響を及ぼす種々の因子について系統的な調査を行う。また、集積過程のin-situ観察を行い、形成メカニズムをより直接的に明らかにする。初年度の遅れを早期に取り戻すためにも、次年度の前半は実験による検討に特に尽力する。【メカニズム解明】シミュレーションによって得られる粒子レベルの知見と実験によって得られるよりマクロなスケールの知見とを組み合わせ、コーヒーリング現象の抑制メカニズムを明らかにする。さらに、コーヒーリング現象を抑制するための粒子懸濁液の調整を可能にするための指針の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
シミュレーションに用いるワークステーションを1台購入する予定であったが、最終的に必要となる計算機のスペックの予測が十分には定まらなかったため、購入を延期した。初年度は主な計算を二次元系で行ったために大きな問題は生じていないが、次年度は計算量の増大が見込まれるため、早い時期の購入を検討している。また、本年度はコロナの感染状況の悪化により大学での実験を計画通り行うことが困難であると判断し、リモートでの対応が可能な数値計算に関する検討の比重を増やして研究を進めたため、実験で必要となる物品の購入が次年度へと持ち越されることになった。
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