2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the spinnability of fluids and its application for prevention of particle sedimentation
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20K15076
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
貝出 絢 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50773074)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糸曳き / 粒子沈降防止 / 粘弾性 / レオロジー / スラリー / 分散系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、流体が糸を曳く性質について、レオロジー特性と関連付けながら考察することを目的としたものである。さらに、糸を曳く性質が、固体を含む液(分散系)の沈降防止に役立つことが予想され、どの程度糸を曳けばよいか、もしくは、どのような曳糸性挙動が見られれば望ましいのかを実験的に明らかにするため、当該年度は以下の実験を行った。溶媒として油類(ドデカン)を用い、低分子オイル増粘・ゲル化剤としてピロメリッド酸テトラカルボキサミド(PMDA-R)を使用した。この化合物は、ベンゼン環を基本骨格とし、その周囲に4つのアミド基を有するものである。アミド基の末端にアルキル基が配位しており、特に、4つの側鎖のうち、結晶性の異なる2種類のアルキル基を導入することで、溶解性だけでなく、レオロジー特性を変えることができる。最大で1wt%の化合物を溶解させて調製した試料に対して、レオロジー特性(平衡流動特性、動的粘弾性)を測定し、さらに本研究で新たに作製した曳糸性測定装置によって、糸曳きを評価した。動的粘弾性の貯蔵弾性率であるG'の最大値(高い各速度域で観察されるG'の平たん部)の値の大小と糸曳きの初期にみられる勾配に関連が見られ、さらにG'とG"の交点から算出できる緩和時間と曳糸長にも関連が見られた。ただし、化合物を得る際の合成条件(スケール、温度、加熱時間等)の違いによって組成が変わり、結果的にレオロジー特性が変わったり、もしくは組成がほぼ同じであっても、撹拌の状況(撹拌機の違い)によっては、液面または針の先端から糸が切れるという糸曳き挙動に顕著な違いが見られることがわかった。粒子の沈降の抑制に必要であると考えている糸の長さは最大で数cmであり、これを評価するためには、特に糸の発現課程ではなく、消失過程を細かに観察する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で、本学の入校制限が設定され、特に前期は大学院生の研究時間の確保に問題が生じた。また本研究では、曳糸性を測定する装置を自作する必要があったが、その部品の納期も大幅に遅れ、装置の完成までに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を達成するために、当初計画した5つのアプローチを以下に示す。 AP-1. 曳糸性を示す液を系統的に調製し、それを用いた実験データを蓄積していく。AP-2. 曳糸性に関連する物理量を探す。AP-3. 曳糸性の大小を操作する技術へ発展させる。AP-4. 曳糸性の発現、および曳糸性が増すと沈降安定性が増すことに対するメカニズムを探る。AP-5. 曳糸性の評価方法と結果を指標で表す方法を提案し、その標準化を図る。 このうち、AP-1.およびAP-2.を2020年度中に完了しており、現在、AP-3.およびAP-4.に着手している(AP-5.は本申請の対象外)。粒子の沈降の抑制に必要であると考えている糸の長さは最大で数cmであり、これを評価するためには、特に糸の発現課程ではなく、消失過程を細かに観察する必要があると考えている。このため、純粋な系(粘性が高いことによって糸曳きが発現する系、高分子凝集剤のように顕著な糸曳きを発現する系)についても糸の形状、その長さ等を明らかにし、流体の粘弾性と糸曳き挙動を関連付ける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、実験がやや遅れ、分析の委託を考えていた試料の選定に時間がかかったことに加え、出張が中止になったことで、計上していた費用を使い切ることが困難になった。 そのため、研究をやや修正し、2022年度から採択された基盤研究(C)と合算して、新たな装置の購入に充て、糸曳き挙動の解明にあたる。購入を予定しているのは、偏光イメージングオプション(Anton Paar, 132256)であり、試料の偏光と糸曳きの関連を評価することを新たに考えている。
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Research Products
(2 results)