2020 Fiscal Year Research-status Report
機能協奏型W-V-Nb系複合酸化物触媒の設計とアクリル酸ワンステップ合成への展開
Project/Area Number |
20K15095
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
小俣 香織 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 講師 (50734133)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクリル酸 / グリセロール / アクロレイン / バイオマス / 固体酸 / ニオブ / バナジウム / タングステン |
Outline of Annual Research Achievements |
アクリル酸をバイオマス由来グリセロールからカーボンニュートラルにワンステップで高効率合成できる、新規機能協奏型リン添加W-V-Nb系複合酸化物触媒の機能設計が本研究の目的である。この目的を達成するために本年度は、W-V-Nb-O触媒が有する2つの機能、すなわち「グリセロールをアクロレインに脱水するW-Nb-Oサイトの機能」と「アクロレインをアクリル酸に酸化するVサイトの機能」に触媒の構造が及ぼす影響を解明することを目指して研究を実施した。 Nb源としてシュウ酸ニオブアンモニウム(ANO)およびニオブ酸を用いて調製したW-V-Nb-Oについて、XRD、TEMおよび窒素吸着による構造解析を行った。いずれのニオブ源を用いた場合にも、金属酸素八面体が層状構造に特徴的なXRDパターンを示し、両者に違いは見られなかった。ただし層の配列についてはXRDで観測できなかった。TEM観察により、いずれも棒状の結晶でありANOから調製した触媒はニオブ酸に比べ結晶サイズが小さいことがわかった。またANOから調製した触媒はニオブ酸から合成した触媒の約2倍の比表面積を有することが窒素吸着により明らかになった。これらの触媒をグリセロールからのアクロレイン合成、およびアクロレインからのアクリル酸合成に用いたところ、いずれの反応においても結晶サイズが小さく高い比表面積を有するANOを原料とした触媒が高い活性を示すことがわかった。しかしながら、アクロレインからのアクリル酸合成に対しては、ニオブ酸を原料とした触媒の方が高い選択性を示した。アクロレインをCOxに完全酸化させることなく、選択的にアクリル酸を得るためには、秩序構造をもった結晶骨格内のVサイトが有効であると考えられる。したがってグリセロールから高選択的にアクリル酸を合成するためには、一定以上の結晶サイズを有する層状構造の触媒を用いる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、「グリセロールをアクロレインに脱水するW-Nb-Oサイトの機能」と「アクロレインをアクリル酸に酸化するVサイトの機能」にW-V-Nb-O触媒の構造が及ぼす影響を検討し、結晶サイズの影響を明らかにした。これを踏まえて今後は、W-V-Nb-O棒状結晶の断面方向の配列をTEMおよびHAADF-STEM観察により明らかするとともに、リンの添加がW-V-Nb-Oの構造およびグリセロール転換反応にどのような効果をもたらすのかを実験と電子状態計算によって解明する。得られた知見に基づいて、グリセロールからアクリル酸をワンステップで高効率に合成可能な触媒の設計指針を得る。さらに触媒上で「グリセロールからのアクロレイン合成」と「アクロレインからのアクリル酸合成」の二つの反応をバランス良くシステマティックに進行できる最適条件として(i)反応物質と触媒との接触時間、(ii)反応ガス組成、(iii)反応温度を明らかにし、高効率アクリル酸合成を実現する。
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