2020 Fiscal Year Research-status Report
C11b-Cr2Alに対する磁気転写によるNeelスピン軌道トルク評価法の確立
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20K15109
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
豊木 研太郎 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90780007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反強磁性 / スタガード磁化制御 / 規則合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超高速動作可能の磁気記録素子への応用に根差し,反強磁性体のスタガード磁化制御を目指している.そこで,材料としてC11b構造を有するCr2Alに着目した.本年度は高クオリティなC11b-Cr2Al薄膜の作製に関して取り組んだ.そのため,製膜時の基板温度およびCr-Al組成の異なる試料に関して作製し,これらの結晶構造を,X線回折を主として評価および検討した.その結果として,C11b構造の形成には500℃以上の製膜時基板温度が必要であること,また少なくとも800℃までは基板温度の上昇に伴いC11b構造の規則度が上昇することがわかった.また,作製試料組成に対しては,47at.%-Alから33at.%-Alの範囲内でCr5Al8相とC11b相の二相共存であり,29at.%-Alから27at.%-Alの範囲内ではC11b単相が形成され,かつ21at.%-Alから9at.%-Alの範囲内でもBCC相との共存であるもののC11b相が形成されることを明らかにした.規則度の観点では,作製した試料の中で化学量論組成に最も近い33at.%-Alにおいて最も高い規則度の薄膜が得らえれることがわかった.この33at.%-Alを有する試料に関しては,少量のCr5Al8相との混相であるものの,バルクの報告値とかなり近い値が得られている.一方で,Neel温度の観点に関してはCrリッチである方が高いという結果も得られた. この成果に関しては,2020年12月の日本磁気学会学術講演会および2021年3月の日本金属学会春期講演大会にて発表を行った.また,論文投稿に関しても準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,高クオリティなC11b構造Cr2Al薄膜の作製に取り組んだ.その結果として,作製条件に関して十分な知見が得られた.また,バルクの報告値と比較して,ほぼ同等の値が得られており,かつ組成によって変化する結晶構造パラメータの傾向に関しても明らかとなった.この成果は,次段階のスタガード磁化制御との対応を考慮するのに十分であると考える.以上より、本年度の研究計画は概して順調であると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果によって,C11b構造Cr2Al薄膜の単相組成領域が明らかとなり,またこの組成範囲内での結晶構造パラメータの変化に関してもある程度明らかとなった.この知見を基盤として,スタガード磁化の電流制御と結晶構造パラメータとの間の相関を検討する.また,当初の予定応じて,C11b構造Cr2Al薄膜の磁気異方性に関しても電気特性をベースとした評価を行う.以上を基として,スタガード磁化電流制御条件-結晶構造パラメータ-磁気異方性の3点に関しての相関を明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ状況下などもあり,予定されていた旅費が削減されたため.今年度の成果によって判明した組成に対する各種パラメータの変化などにより,検討試料枚数を増加させる方向性を得たので次年度における基板購入などに充当する予定である.
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