2020 Fiscal Year Research-status Report
平衡を考慮した配位子保護金属クラスターの発光特性の解明
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20K15110
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
新堀 佳紀 立教大学, 理学部, 助教 (20734924)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 配位子保護金属クラスター / 平衡 / 発光解析 / 三重項-三重項消滅光アップコンバージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では配位子保護金属クラスターにおける金属原子や配位子、カウンターイオンの結合解離平衡状態を考慮し個々の平衡種の物性を理解すること、また平衡反応を利用した目的の化学種の選択的合成法の確立を目的としている。種々のホスフィン系配位子と銀クラスターの系において、ホスフィン配位子数の異なる平衡種が存在することを明らかにし、ホスフィンの種類に依存した配位子-クラスター間の結合定数を評価することができた。 一方、長波長の光からそれよりも短波長の光を生み出す技術は光アップコンバージョンと呼ばれ、特に有機色素などの三重項消滅に基づく光アップコンバージョン(TTA-UC)は太陽光程度の弱い放射強度の光でも動作するため、TTA-UCを用いた太陽電池や光触媒の高効率化が期待されている。本研究では、銀クラスターが有機色素の励起三重項状態を増感することができることを発見し、これにより銀クラスターの励起状態には三重項性が含まれていることを初めて見出した。また、銀クラスターへ白金原子をドープした銀-白金合金クラスターを用いたTTA-UC実験では、白金ドープが銀クラスターのTTA-UC効率を飛躍的に向上させ、青色に発光する有機色素を組み合わせることで近赤外光励起から青色発光を生み出すことに成功した。得られた結果を合理的に説明するため、金属クラスターの励起状態緩和におけるダイナミクスの新たなモデルを提唱するとともに、金属クラスターの三重項生成収率を決定する方法を確立することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
購入した単一光子検出器と測定用ソフトウェアを用いた発光測定と解析により、いくつかの金属クラスターの平衡種の存在を確認することができ、それらの発光特性のライブラリー化を進めている。 一方、研究を進める中、銀クラスターと発光性有機色素間ではTTA-UCが比較的高効率で起こることを発見した。銀クラスターとホスフィン配位子間の結合解離平衡反応を利用してクラスター表面の配位子数を制御した平衡種に対してTTA-UCの一連の測定・解析を行い、配位子の平衡が励起状態、特に励起三重項状態に与える影響を調査中である。また、このほか様々な金属クラスターと発光性有機色素に対し、高効率なTTA-UCを実現する組み合わせを探索している。 以上のことから〈当初の計画以上に進展している〉と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、適切な金属クラスターと発光性有機色素を組み合わせて比較的高効率なTTA-UCを確認することができた。そこで、チオール基やホスフィンが導入された色素配位子を合成し、色素配位子と金属クラスター間での結合解離平衡反応を利用することで、望みの色素配位子数を有した色素-金属クラスター複合系の選択的合成に取り組む。得られた複合体に対して一連の発光あるいはTTA-UCの測定・解析を行うことで、さらに高効率なTTA-UCを実現することを目指している。
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