2020 Fiscal Year Research-status Report
顕微分光を利用した単一カーボンナノチューブにおける発光中心形成の精密制御
Project/Area Number |
20K15112
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小澤 大知 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30756060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 単一光子源 / 発光中心 / 化学反応 / 励起子 / 低次元ナノ物質 / 量子 / 発光顕微分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一光子源は量子デバイスの重要な構成要素であり、様々な材料を用いて研究が行われてきた。光子を1個ずつ取り出して量子情報として使うためには、光子源から放出される光子が他の光子と混ざらないように、光子源の密度を制御する必要がある。さらに単一光子源をモジュール化するためには、光子源を任意の位置に形成して配線可能にすることが今後重要になるだろう。 本年度はその足がかりとして、Si基板の溝に架橋したカーボンナノチューブに発光性欠陥を化学的に導入し、その発光特性の詳細な解析することを試みた。光化学反応によりカーボンナノチューブに化学修飾をして、発光中心となる欠陥を作製した。2000本以上の異なるカーボンナノチューブに対して発光顕微測定を行い、発光スペクトルを取得した。発光スペクトルにおける強度やピーク位置を定量的に解釈するために物理・化学モデルを構築した。これによりカーボンナノチューブの直径により反応性に違いが出てくることがわかった。また反応による発光強度の変化測定と励起子拡散モデルを組み合わせることで、欠陥密度を見積もれるようになった。一連の研究結果について、国内およびアメリカの外部共同研究者らと議論を進めた。研究代表者は筆頭著者として論文を執筆し、国際科学誌に投稿した。 カーボンナノチューブというマクロスケールの長さを持つ材料と、低分子サイズのナノスケール構造を自由自在に組み合わせることができるようになれば、ナノとマクロとをシームレスにつなぎ合わせる重要な技術になるだろう。また今後の研究発展と、既存の微細加工技術と組み合わせることで、カーボンナノチューブ量子光源を用いた回路の集積化も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で通常通りの研究活動が困難な状況の中、リモートで実験を行うなどの工夫を試みてきたので、課題の進捗状況及び達成状況は順調である。具体的な進捗状況は次に記述する。 昨年度はSi基板の溝に架橋したカーボンナノチューブに発光性欠陥を化学的に導入し、その発光特性の詳細な解析することを試みた。光化学反応によりカーボンナノチューブに化学修飾をして、発光中心となる欠陥を作製した。2000本以上の異なるカーボンナノチューブに対して発光顕微測定を行い、発光スペクトルを取得した。発光スペクトルにおける強度やピーク位置を定量的に解釈するために物理・化学モデルを構築した。これによりカーボンナノチューブの直径により反応性に違いが出てくることがわかり、その発光強度やエネルギーの結果を定量的に解釈するために物理・化学モデルを構築した。さらに、反応による発光強度の変化測定と励起子拡散モデルを組み合わせることで、欠陥密度を見積もれるようになった。 一連の研究結果について、国内およびアメリカの外部共同研究者らと議論を進めた。研究代表者は筆頭著者として論文を執筆し、国際科学誌に投稿した。また発光性欠陥の形成をリアルタイムで検出・制御する機構を構築するなど独自の実験技術を確立しつつあるなど、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本提案により、気相で架橋カーボンナノチューブに発光中心を形成できるようになった。この成果をもとに、今後は欠陥構造の導入のための光化学反応制御、精密に位置制御された欠陥構造の導入へと研究を発展させていく予定である。2020年度の研究成果から前駆体ガスを流すだけでは反応性が不十分であることがわかったので、高光子エネルギーのレーザーを導入して反応性の向上を狙う。これまでに開発してきた単一欠陥分光の技術や自動測定プログラムを組み合わせることで、単一分子レベルで発光性欠陥が形成される瞬間を検出し、フィードバックをかけるなどの反応制御を行う。この方法はレーザーを集光して狙った位置に単一光子源を導入するので、いわゆるフォトリソグラフィーを独自に発展させた技術と言える。
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Research Products
(7 results)