2021 Fiscal Year Annual Research Report
顕微分光を利用した単一カーボンナノチューブにおける発光中心形成の精密制御
Project/Area Number |
20K15112
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小澤 大知 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30756060)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 発光中心 / 単一光子源 / 励起子 / 光化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
単層カーボンナノチューブは室温、通信波長帯域で単一光子発生をすることから、量子情報技術への応用が期待されている。これまでに、ナノチューブに官能基を化学修飾することで発光中心、つまり発光性の格子欠陥を導入し、単一光子源となることが明らかにされてきた。この発光中心はこれまで、溶液中での反応によりランダムな場所に形成されるため、発光中心の導入位置や個数を正確に制御することが困難であった。本研究ではこの制御を厳密に行うため、気相中で発光中心を形成すること、その発光特性を明らかにすることを目指して研究を行った。 長尺のナノチューブを用いるために、Si基板の溝に架橋されたナノチューブを合成した。ヨードベンゼンの蒸気を用いた気相光化学反応法により、架橋カーボンナノチューブの化学修飾を行う手法を実証した。発光中心の導入は、反応前後で同じナノチューブの発光スペクトルを比較することで確認した。反応後は量子欠陥からの発光を示すピークが新たに観測された。さらに、同様の発光分光測定を2000本以上のカーボンナノチューブに対して行うことで、ナノチューブの直径ごとの反応性や発光特性が明らかになった。 以上の結果から、架橋カーボンナノチューブへの気相化学反応が可能になったことで、反応分子数の精密なコントロールが実現し、単一分子レベルで量子欠陥を導入できる技術となることが期待される。また本手法は、ナノチューブの長さ1マイクロメートルあたり1-2個という、非常に低密度の欠陥が導入できる点で重要である。今後さらに反応条件を最適化し、ナノチューブ1本に対して量子欠陥が1個だけある構造が作製できれば、単一光子源としての性能向上につながると考えられる。
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Research Products
(6 results)