2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲルマニウム重い正孔スピン量子ビットの開発とスピン軌道相互作用の制御による最適化
Project/Area Number |
20K15114
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
溝口 来成 東京工業大学, 工学院, 研究員 (90848772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲルマニウム / 量子ドット |
Outline of Annual Research Achievements |
正孔スピン量子ビットの高性能化に向けて、今年度はGe/SiGeヘテロ構造基板を利用した量子ドットデバイスの作製と量子ビット読み出しに向けた測定系の構築を行った。
ヘテロ構造基板表面に、ゲート絶縁膜と微小ゲート構造を堆積することで量子ドットデバイスが実現できる。多層微小ゲート構造を作製することで精度良くポテンシャルの調整を行うことができるようになるが、同時に複雑なプロセスを必要とするため、その前段階として単層のゲート構造を持ったシンプルな量子ドットデバイスを作製した。極低温下におけるDC電流測定から量子ドット特有の特性を観測することに成功したが、その特性が安定していないことが明らかとなった。この原因として絶縁膜中の電荷トラップが一因であると考えられる。今後は特性改善のため、絶縁膜の成膜条件の改善を行う。また、多層微小ゲート構造作製に向け、アルミニウムの酸化の条件出しを行った。
Ge量子ドットデバイス作製に並行して、量子ビット測定に向けた高周波反射測定系の構築を行った。高周波反射測定では高速なスピンの読み出しが可能になる。高周波反射測定ではLC共振回路が必要となるが、コイルの寄生容量やデバイスの載るプリント基板の誘電損といった、現実の系で生じる寄生成分の影響はまとめて調べられていなかった。本研究では、高性能な反射測定系の構築のため、このような寄生成分の影響を極低温における高周波の特性の周波数依存性から解析した。ここで得られた知見はGe量子ビットの読み出しに重要な役割を果たすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の初めでは、すでにデバイスの大部分が完成していた基板に微小ゲート構造を作製することで量子ドットデバイス作製し、その測定を行うことができた。しかし、量子ドットの特性が不安定であったため、予定していたスピンに関する知見が得られなかった。特性改善のため、デバイス作製を初めから行う必要があったが、コロナ禍による制限により進めることができず、計画に遅れが生じた。一方で、当初の予定とは順序が異なるものの量子ビットの読み出しに重要な技術について先行して研究を行うことができたため、全体としてはやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在計画を遂行する上で問題となっているのは、デバイスの特性の不安定さである。これは、ゲート絶縁膜の質によるものと考えれるため、新しく評価用にデバイスを作製し、最適な成膜条件を調べる。それ以降は、当初の研究計画に沿って研究を進める。
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Causes of Carryover |
本年度中に高精度電圧源を購入し、デバイスの電気特性の詳細な評価を行う予定であったが、作製したデバイスの特性が不安定という問題があった。このデバイスの評価は所属研究室所有の簡単な評価系で測定を行ったため、次年度使用額が生じた。次の年度中にデバイス作製プロセスの改善による量子ドットデバイスの特性の安定化を行い、計画通りの物品を購入する予定である。
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